海洋汚染防除研究グループ

水底の泥からマイクロプラスチックを回収する新技術

背景と課題

マイクロプラスチックは海洋環境に深刻な影響を与えています。特に水底の泥に蓄積することで、生態系への長期的な影響が懸念されています。しかし、これまでの回収方法では泥からの分離が非常に困難でした。


新技術の概要

本研究では、泥の中に含まれるマイクロプラスチックを効率よく分離・回収するためにハイドロサイクロンを用いる方法を開発しました。装置内部で粒径や比重の違いを利用し、泥からマイクロプラスチックを選択的に抽出する仕組みです。

実験結果と効果

  • 従来方法では、10kgの泥を処理するのに数時間から1日程度を要していましたが、本手法では30秒程度の処理時間でした。
  • ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの比較的軽いプラスチックはオーバーフローから排出され、容易に回収できました。

効率的かつ現場での運用が容易な本技術は、環境保全に大きく貢献する可能性があります。


今後の展望

この技術は海洋調査や底質モニタリング、漁場保全など様々な分野での応用が期待されます。今後は、さらなる装置の高効率化や他の環境汚染物質の分離への応用も検討していきます。


関連論文

タイトル:New method for extracting microplastics from sediments using a hydrocyclone and sieve
掲載誌:Results in Engineering
https://doi.org/10.1016/j.rineng.2024.103232


共同研究協定について

・本技術は、港湾空港技術研究所と東亜建設工業㈱との共同研究(令和2~4年)により開発されたものです。
・共同研究により、以下の特許権を取得しています。
特許番号:特許第7072780号「プラスチック片の回収方法および回収システム」
(特許権者:東亜建設工業株式会社、国立研究開発法人 海上・港湾・空港技術研究所)
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202203014933783528


お問い合わせ

港湾空港技術研究所 海洋環境制御システム研究領域
担当:井上 徹教(研究代表)
Eメール:inoue-t@p.mpat.go.jp