海洋汚染防除研究グループ

EcoPARI 適用事例

Marine Pollution Management Group
No 海域 モデル 主な結果 備考、文献出典
1 伊勢湾 流動・生態系モデル 伊勢湾における河川負荷の削減が一次生産性と酸素枯渇に与える影響を数値実験によって調査した.その結果,河川負荷の削減により河口付近の局所的な一次生産性が減少するが,湾全体ではほとんど改善しないことが示された 田中陽二, 中村由行, 井上徹教, 鈴木高二朗, 内田吉文, 澤田玲, 内藤了二. (2012). 伊勢湾での陸域負荷削減が一次生産量と貧酸素水塊の規模に与える影響. 土木学会論文集B2(海岸工学), 68(2), I_1131-I_1135. https://doi.org/10.2208/kaigan.68.I_1131
2 伊勢湾 流動・生態系モデル 下水処理場での栄養塩の排出量と伊勢湾内の一次生産,二次生産,二枚貝資源の関係に関する数値シミュレーションを実施した.その結果,栄養塩を増やすことで,これらを増加できることが示された.また,その地理的条件により,窒素やリンの濃度が低い海域には,栄養塩を効率的に供給することができないことも示された. 永尾謙太郎, 中村由行, 鶴島大樹, 小山悠人. (2019). 伊勢湾における下水処理場での栄養塩の管理運転の有効性に関する試算. 土木学会論文集B2(海岸工学), 75(2), I_1021-I_1026. https://doi.org/10.2208/kaigan.75.I_1021
3 伊勢湾 流動・生態系モデル 2000年代以降,夏の底層に貧酸素水塊が発生する要因を分析し,底層からの外洋水の流入と貧酸素水塊の大きさの関係性を示唆した. 鶴島大樹, 永尾謙太郎, 白崎正浩, 日恵井京子, 藤田智志, 中田喜三郎, 中村由行. (2023). 伊勢湾における2000年代以降の夏季底層貧酸素水塊の変動要因について. 海洋理工学会. https://doi.org/10.14928/amstec.27.2_1
4 伊勢湾 流動・生態系モデル 微生物ループを調査し,窒素とリンの濃度がさらに低下すると,食物連鎖における微生物食物網の割合が増加し,一次生産から二次生産への移行効率が低下することを明らかにした. 永尾謙太郎, 中村由行. (2018). 伊勢湾における窒素・リン濃度に対する微生物ループの応答. 土木学会論文集B2(海岸工学), 74(2), I_1243-I_1248. https://doi.org/10.2208/kaigan.74.I_1243
5 伊勢湾 流動・生態系モデル・二枚貝モデル 1990年代後半から2010年代にかけての長期予測計算を行い,2010年頃からアサリの肥満度が低下し,産卵数も減少すると予測した. 鶴島大樹, 永尾謙太郎, 中田喜三郎. (2019). 数値シミュレーションを用いた伊勢湾におけるアサリの餌料不足に関する一考察. 土木学会論文集B2(海岸工学), 75(2), I_1111-I_1116. https://doi.org/10.2208/kaigan.75.I_1111
6 伊勢湾 流動モデル 伊勢湾への河川流量の不確実性に基づいて,現況予測(nowcast)あるいは短期予測(forecast)に関する数値予測モデルでシミュレートされた塩分と海水温の誤差範囲を推定した.この方法による現況予測に用いられた年間河川流量の不確実性は±30%以内と推定された.また,河川流量の不確実性に基づく塩分と海水温の年間シミュレーション誤差範囲は,それぞれ約±1.2℃と±0.15℃と推定された. Matsuzaki, Y., Kubota, M. (2024). Uncertainty in River Discharge Forcings and Error Range on Nowcasting Numerical Simulation of Salinity and Seawater Temperature in Ise Bay, Japan. Marine Pollution Bulletin, 207, 116734. https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2024.116734
7 東京湾 流動・生態系モデル・底生生態系モデル 底層水の溶存酸素濃度と青潮の発生について詳細な数値シミュレーションを実施した. Wang, K., Nakamura, Y., Sasaki, J., Inoue, T., Higa, H., Suzuki, T., Hafeez, M. A. (2022). An Effective Process-based Modeling Approach for Predicting Hypoxia and Blue Tide in Tokyo Bay. Coastal Engineering Journal, 64(3), 458-476. https://doi.org/10.1080/21664250.2022.2119011
8 東京湾 流動・生態系モデル・底生生態系モデル 硫化物・鉄・マンガン循環に着目して流域河川及び湾内における現地観測及び3次元浮遊系−底生系結合モデルによる数値解析を行った.その結果,水中の溶存酸素濃度,溶存態鉄濃度,硫化水素濃度と,堆積物中の溶存態鉄,溶存態マンガンの鉛直分布を概ね再現することができた. 比嘉紘士, 中村聖美, 林宏樹, 岡田輝久, 中村由行, 井上徹教, 鈴木崇之. (2023). 東京湾における水底間の硫化物・鉄・マンガン循環に関する現地観測及び生態系モデル解析. 土木学会論文集, 79(17). https://doi.org/10.2208/jscejj.23-17143
9 大阪湾 流動モデル 窪地での酸素減少が問題となっている大阪湾で数値シミュレーションを実施した.高解像度のメッシュ構成で窪地内の流体力学を正確にシミュレーションするためにBCM(Building Cube Method)を使用し,高解像度に窪地内の数値シミュレーションを行うことに成功した. Hafeez, M. A., Inoue, T., Matsumoto, H., Sato, T., Matsuzaki, Y. (2024). Application of Building Cube Method to reproduce high-resolution hydrodynamics of a dredged borrow pit in Osaka Bay, Japan. Proceedings of the 11th International Conference on Asian and Pacific Coasts: Apac 2023, 14-17 Nov, Kyoto, Japan. Edited by Yoshimitsu Tajima, Shin-Ichi Aoki, and Shinji Sato. Kyoto, Japan: Springer. https://doi.org/10.1007/978-981-99-7409-2_26
10 宍道湖 流動モデル 観測された塩水侵入と密度成層を正確にシミュレートしようと試みた.その結果,夏季の塩水侵入や,9月の強い西風による湧昇を再現することができた. Hafeez, M. A., Inoue, T. (2024). Three-Dimensional Hydrodynamic Modelling of Saltwater Ingression and Circulation in a Brackish Lake Shinji, Japan. Advances in Water Resources, 184, 104627. https://doi.org/10.1016/j.advwatres.2024.104627
11 東京湾(お台場) 流動モデル・生態系モデル お台場エリアの大腸菌の行動をシミュレートする モデルが開発された。 沿岸エリアで計算された塩分濃度の結果は、概ね観測結果と一致している。 このモデルは、降雨イベントに関連する大腸菌濃度のパターンを再現する。

 

Mizuki. Arii, C. Poopipattana H. Furumai& H. Higa, Long-term numerical analysis of fecal pollution caused by combined sewer overflows in the Odaiba coastal area of Tokyo using Eco PARI, 16th International Conference on Urban Drainage
12 伊勢湾・三河湾 流動モデル・生態系モデル 2020820日に三河湾で発生した底層低酸素水塊の急激な解消について、流動生態系シミュレーションシステムEcoPARIを用いて要因を解析した。沿岸河口域において短期間での底層溶存酸素濃度の解消について数値モデルで再現することに世界で初めて成功した。また感度解析の結果、底層溶存酸素濃度の解消には湾口付近の高塩分水による密度流が主に寄与しており、風や潮流の影響は限定的であることが判明した。本研究は、沿岸域における低酸素問題の理解と対策に資する知見を提供するものである。

Yoshitaka Matsuzaki, Masaya Kubota, Tetsunori Inoue, Hayato Mizuguchi, Ecological hydrodynamic modeling and factor analysis of hypoxia dissipation in the semi-enclosed Mikawa Bay, Japan, in August 2020, Marine Pollution Bulletin, 2025