津波による犠牲者を激減させる可能性が開ける

平成30年5月24

 

 

津波による犠牲者を激減させる可能性が開ける

―ライフジャケットを装着したダミーは人工津波に巻き込まれずに水面にとどまることができたー

 

2004年のスマトラ島沖地震、2011年の東日本大震災などで生じた津波による犠牲者の大半は溺死です。ところが、津波に巻き込まれた人体が水中や水面でどのような動きをしているのかは不明でした。

今回初めて海上・港湾・航空技術研究所の大規模波動地盤総合水路を使って、等身大のダミーが人工津波に巻き込まれ水面に浮上できないことを画像的に実証し、また、ダミーの頭部の水中での軌跡を図示することができました。

一方、ライフジャケットを着けたダミーは水中に引き込まれることなく、水面にとどまることができました。

これらの実験結果は、今後の津波による溺死者を激減させる可能性の扉を開いたと考えられます。

 

栗栖 茜、海上・港湾・航空技術研究所の井上徹教、鈴木高二朗、海洋研究開発機構の菅寿美、小栗一将、大分工業高等専門学校のズデネク プロハースカの研究グループは、ダミーが50 cmの人工津波に巻き込まれ水面に浮上できないこと、その一方で、ライフジャケットを着けたダミーは水中に引き込まれることなく、水面にとどまることができることを画像的に実証し、その水中での挙動を図示することに成功しました。

本研究は科学研究費補助金(基盤研究(B)研究課題/領域番号 16H03147「津波被災時の救命胴衣の有効性の検討と迅速な救助に資する予測システムの開発」研究代表者:井上徹教)の支援の下に行われました。その研究成果は文部科学省補助金の支援の下で行われ、その研究成果は国際科学電子ジャーナル誌PLOS ONEに、2018524日公開されます。

 ライフジャケットを着けたダミーの頭部は水面下にとどまっている

 

 

     ライフジャケットを着けていないダミーは津波の渦に巻き込まれて水面に浮上できない

 

研究の背景

2011年の東日本大震災以降、津波による災害を減らすために、津波の沿岸部への到達時間や到達時の波高についての研究、また、津波到達前に可及的速やかに高台へ避難するための組織づくりや啓蒙は精力的におこなわれてきました。しかし、これまで、実際に人体が津波に巻き込まれたときに、水面あるいは水中で人体がどのような動きをするかについての研究はなされてきませんでした。そのため、津波に巻き込まれてしまった人々が溺死するのをどうすれば減少させることができるかという喫緊の課題も解決策を見いだせないでおります。

 

研究の成果の概要

ライフジャケットを着けていないダミーが50 cmの人工津波に巻き込まれていったん水槽の底にまで引きずり込まれ水面に浮上できないこと、その一方で、浮力7kg重のライフジャケットを着けたダミーは水中に引き込まれることなく、水面にとどまることができることを実験によって証明できました。

 

研究成果の意義

本研究により、津波に巻き込まれてもライフジャケットを装着していれば、水面に浮上し続けられる可能性が示唆されます。つまり、呼吸が確保され、溺死しないですむのです。今後、一般的なライフジャケットの浮力がどの規模の津波にまで有効であるかの確認、さらにライフジャケットを着けて水面を漂流している人たちをできるかぎり短時間のうちに発見するための技術、ライフジャケットを普及させるための改良といった研究が課題となります。

 

【論文情報】

掲載誌:PLOS ONE

論文タイトル: Potential technique for improving the survival of victims of tsunamis

著者名: A.kurisu, H.Suga, Z.Prochazka, K.Suzuki, K.Oguri, T.Inoue

 

 

●問い合わせ

共同研究者・筆頭著者 栗栖 茜

Tel: 090-8689-3330

E-mail: kurisu.akane@peach.plala.or.jp

 

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所

海洋環境情報グループ長 井上 徹教(いのうえてつのり)

Tel: 046-844-5107 Fax: 046-842-5246

E-mail: inoue-t@pari.go.jp

耐波研究グループ長 鈴木 高二朗(すずきこうじろう)

Tel: 046-844-5043 Fax: 046-842-7846

E-mail: Suzuki_k@pari.go.jp

海洋研究開発機構 海洋生物多様性研究分野 主任技術研究員

小栗 一将

Tel:046-867-9794

E-mail: ogurik@jamstec.go.jp

生物地球化学研究分野 技術副主任

菅 寿美

Tel:046-867-9806

 

                                                                                    

●報道対応

 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 

 管理調整・防災部 企画調整・防災課長 野田 厳(のだ いわお)

 Tel: 046-844-5040 Fax: 046-844-5072

 E-mail: kikaku@ipc.pari.go.jp

 海洋研究開発機構 広報部報道課長

 野口 剛

 Tel:046-867-9198

 

  

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