研究について

研究成果

砕波帯構造物の周辺洗掘と海岸の沿岸方向一様性の変化

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1383 2021年03月
執筆者 中村 聡志
所属 沿岸環境研究領域 上席研究官(海浜変形解析担当)
要旨

 波崎海洋研究施設観測桟橋は砂浜海岸の漂砂現象に対する影響を少なくするため1列(一部2列)の鋼管杭によって支えられている。しかしながら、観測桟橋のある砕波帯内は波が砕けて海浜流が生じるため、杭周辺には局所的な洗掘や群杭による広範囲の洗掘が生じている。本研究では、波崎海洋研究施設観測桟橋周辺の深浅測量、航空写真、杭周りの洗掘状況調査の結果を用いて、観測桟橋による砂浜地形への影響および海岸の沿岸方向一様性についての検討を行った。
 深浅測量結果は、観測桟橋建設前の1982年2月から2020年8月12日までのほぼ毎年1回から2回行われた計52回分を用いた。航空写真は、1947年10月25日から2020年1月20日までの国土地理院から購入した空中写真および空撮会社に撮影依頼した空中写真の計31回分を整理した。杭周りの洗掘状況については、2013年3月に実施した音響ソナー測深調査結果を用いた。
  観測桟橋杭構造による周辺洗掘は沿岸方向鹿島側銚子側ともに30m程度の範囲で広がっており、特に2列杭となっている先端部(桟橋座標系でP400)、中間部(P200)、可動橋部(P100)周辺では50m程度の範囲まで洗掘穴が広がっている。周辺地盤高と比較して先端部で1m程度、中間部で0.75m程度、可動橋部で0.4m程度の周辺洗掘が平均的に生じている。高波浪イベントによる侵食時には観測桟橋周辺がより多く侵食される傾向がある。
 海岸の沿岸方向一様性については、桟橋直近の測線0mを除く測線間の沿岸方向の空間標準偏差を用いて評価した。高波浪イベント、例えば2007年では、標準偏差が大きくなる(沿岸方向に地盤高が大きく変わり一様性がなくなる)。こうした一様性の低下は、観測桟橋のあるP0~P400の間では数年で解消されるが、沖合P400~P1000では7年程度解消されない。
  波崎観測桟橋で得られた観測データを提供する際に本研究でまとめた深浅測量c航空写真、洗掘状況調査結果は基礎資料として有用である。また、海洋風力発電風車など沿岸域に建設される構造物による海底地形への影響を検討するうえで有益なデータとなる。

*深浅図整理データが必要な場合は港空研企画調整・防災課より提供いたしますのでご連絡願います.

キーワード:波崎海洋研究施設、深浅測量、周辺洗掘、沿岸方向一様性、経年変化

全文 TECHNICALNOTE1383(PDF/15,965KB)