研究について

研究成果

台風1915号の気象・高潮・波浪の特徴と横浜港の浸水被害

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1379 2020年12月
執筆者 河合 弘泰・鈴木 高二朗・平山 克也・川口 浩二・山本 康太・本多 和彦・里村 大樹・鶴田 修己・藤木 峻・千田 優・岩本  匠夢・朝比 翔太・川口 真吾・久保田 博貴
所属 海洋研究領域 海洋研究領域長
要旨

 本資料は、台風1915号による東京湾の風・潮位・波浪の観測値や再現計算、横浜港金沢区護岸の入射波浪・越波・波浪、金沢区他の浸水地点の現地調査の結果をとりまとめたものである。
(1) 台風1915号は、東京湾周辺に来襲した台風の勢力としては過去70年間で5位に入り、最大風速半径が標準の半分以下という個性を持っていた。
(2) 台風の中心付近に限ると、気象庁毎時大気解析データMSMの気圧は観測値に比べて高く、風速は小さくなっており、藤井・光田の経験的台風モデルの再現性が良かった。領域海洋モデルROMSによって東京湾の高潮を推算し、気象場の精度を高めることで高潮の精度を高められることを再確認した。
(3) ナウファスの第二海堡では、1991年の観測開始以来で最大の有義波3.27 m、6.4 sを観測した。MSMの風速場と第三世代波浪推算モデルSWANによって、その第二海堡の波浪を概ね再現するとともに、横浜港金沢区の沖合では湾口と湾奥からの波浪が重なることが分かった。
(4) 横浜港の金沢区(福浦地区、幸浦地区)、本牧D突堤、はま道路の周辺で、UAVやRTK-GNSSを用いて、浸水域や浸水地点の地盤高や浸水深を調査した。福浦地区では護岸から内陸に最大で800 mまで浸水が生じていた。
(5) 波浪推算で得たスペクトルを境界条件に、ブシネスク方程式モデルNOWT-PARIを用いて、起伏に富んだ海底地形を経て福浦地区護岸に至る波浪変形と護岸の越波を計算した。護岸の北側で浅瀬による波の集中が確認されるとともに、差分誤差や越波モデルの特性による影響を極力抑えたときの平均越波流量は、区間により最大0.04~0.06 m3/s/m程度と算定された。
(6) その護岸の形式はパラペット後退型であり、数値波動水路CADMAS-SURF/2Dによってその護岸に作用する波圧を計算すると、合田式の2倍以上であった。

キーワード:台風、気象場、高潮、波浪、護岸、越波、波圧

全文 TECHNICALNOTE1379(PDF/14,568KB)