研究について

研究成果

珊瑚骨材を用いたコンクリートの海洋構造物への適用可能性に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 59-2-1 2020年09月
執筆者 西田 孝弘、山路 徹、与那嶺 一秀、谷口 修、田中 亮一、竹中 寛、清宮 理
所属 構造研究領域 材料研究グループ
要旨

 日本本土の南方には、珊瑚が化石化した石灰岩(以下、珊瑚骨材と称す)が多く堆積している。そのような地域の遠隔離島では、現地で調達できる海水と珊瑚骨材を、コンクリート用材料として用いることが経済性や製造効率の観点で望ましい。ただし、珊瑚骨材は内部に多くの空隙を有する構造であり、普通骨材に比べて品質が劣るとされる。また、自己充填性を有するコンクリートを使用することで、施工の省力化が図れると期待できるが、珊瑚骨材を用いた場合の自己充填型コンクリートについては、これまでに検討された実績がない。
 以上を踏まえ、本研究では、珊瑚骨材を用いたコンクリートの海洋構造物への適用可能性を検討するため、南鳥島で採取した珊瑚骨材の特徴を整理した。また、骨材として珊瑚骨材を、練混ぜ水として海水を使用し、さらに自己充填性を付与したコンクリートを主対象とし、基礎的性質、収縮特性、熱的性質等について実験的検討を行った。一方、沖縄で産出された珊瑚骨材を用いたコンクリートの海洋暴露試験が1976年に開始されており、本研究では、長期曝露後の供試体の調査(44年間経過後)を行い、海水が作用する環境での長期挙動(耐海水性)の評価を行った。  知見を以下に示す。
1)自己充填型コンクリートへ適用した際、所要の流動性や間隙通過性を確保できることが確認された。ただし、骨材の加圧吸水に伴うフレッシュ性状の変化が懸念されるため、コンクリートをポンプ圧送により打ち込む場合は留意が必要である。
2)硬化後のコンクリートについては、普通骨材を用いた場合と同等程度の強度発現性を有すること、収縮ひずみや熱膨張係数が小さくなることなどが確認された。
3)海中および干満環境に40年以上暴露された後においても、本研究で対象としたコンクリートは圧縮強度の強度増進が確認された。
 以上の検討により、珊瑚骨材は内部空隙が多く、低品質な場合もあるが、対象環境の特徴を踏まえ、適切な配合を使用することで、コンクリート用骨材として海洋環境においても十分適用可能なことが示された。

キーワード:海洋コンクリート構造物、珊瑚骨材、圧縮強度、収縮、長期暴露

全文 REPORT59-2-1(PDF/2,896KB)