研究について

研究成果

液状化対策として薬液を注入した地盤の原位置調査による強度評価法

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1366 2020年02月
執筆者 菅野 高弘・善 功企・末政 直晃・春日井康夫・山﨑 浩之・林 健太郎・澤田 俊一・遠藤 敏雄・加藤 幸輝・中川 大・規矩 大義・山口 恵美・藤井 紀之・馬場香奈江・藤井 照久・高田 圭太
所属 地震防災研究領域 耐震構造研究グループ
要旨

 近年、薬液注入工法が、液状化対策を目的として適用される事例が増えている。施工後の地盤強度の確認は、ボーリングによる試料採取と一軸圧縮試験を行う方法が一般的に行われてきた。しかし、液状化対策を必要とする砂地盤は骨格構造が緩く、かつ薬液注入による設計強度が一軸圧縮強さ(qu)で50~100kN/m2程度と比較的小さいため、試料採取から試験までの過程で乱れの影響を受け、quを過小評価することが指摘されていた。
 本資料では、乱れの影響の少ない原位置調査方法(ピエゾドライブコーン試験:PDC試験、孔内載荷試験:PMT)の薬液注入地盤の強度評価への適用性の検討を行った。得られた結果と主な結論は以下の通りである。
(1)薬液注入地盤に対して実施したブロックサンプリング(BLS)試料から得られた一軸圧縮強さquは、試料の乱れ等の影響が小さく、同じ現場で行った一般的なボーリング試料によるquと比較して、1.5倍から4.8倍程度大きかった。
(2)PDC試験では、薬液注入前後の間隙水圧応答を比較することで、深度方向に連続的に薬液注入地盤の出来形(薬液注入の有無)を評価・判断する目安になる。
(3)薬液注入前後のPDC試験から得られるNd値の増分(⊿Nd値)と薬液注入地盤の一軸圧縮強さquには、密度、薬液濃度、上載荷重の有無に関わらず、砂ごとにユニークな原点を通る線形関係qu=γ × ⊿Ndがある。また係数γは、細粒分含有率(FC値)の関数、γ= 1.2 ×FC +20で表される(ただし、FC<25%の範囲。FC≧25%の場合、γ = 50(一定))。
(4)PMTから求まる有効降伏圧力Py’とBLS試料のquには、qu=0.60×Py’(平均)の関係がある。また、PMTの繰返し載荷過程の変形係数の平均値E*とBLS試料のquにはqu =E*/β(係数β=240)の関係がある。ただし、PMTにおける孔壁の乱れを考慮すると、後者の適用性が高いと考えられる。
(5)上記の知見は、限られた地盤を対象とした結果であるが、他の土質や配合条件などが異なる薬液注入地盤に対しては、室内配合試験を行い、係数βを補正することで適用可能と考えられる。
(6)以上の結果から、薬液注入地盤においてPDC試験とPMTを行うことで、従来よりも精度の良い薬液注入地盤の強度評価が可能となる。

キーワード: 液状化対策、薬液注入工法、試料の乱れ、原位置試験、ピエゾドライブコーン試験、孔内載荷試験

全文 TECHNICALNOTE1366(PDF/14,956KB)