研究について

研究成果

UAVによる沿岸域の写真測量の精度の検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1360 2019年11月
執筆者 川口真吾・鈴木高二朗・鶴田修己・朝比翔太
所属 海洋研究領域 耐波研究グループ
要旨

 回転翼型(マルチローター)UAVは、その操作性の容易さから近年では急速に普及が進んでいる。 そうした中、UAVの沿岸域測量への活用から測量技術・運用の革新が期待されており、例えば、船舶を使用しなければ測量が実施できなかった島防波堤の測量や、被災地における迅速な被災状況把握がその一例として挙げられる。しかし、実際にUAVによる島防波堤の測量を行うためには、高精度な写真測量方法の確立が必要であり、その検討は未だ十分ではない。そこで本研究では、被災地におけるUAVを活用した調査方法の検討を実施し、その結果、以下の事を明らかにした。
 まず、写真測量方法について4種類の方法について検討を実施した。第一に、従来の単独測位UAVを用いて撮影写真の解析から3次元測量を実施した。これは護岸と防波堤の各測量対象ともに標高誤差が顕著で、最大30m程度の誤差が確認された。一方、単独測位UAVによる空撮に対して適切なGCP補正が実施可能となる条件下では、最大誤差が0。174mに抑えられた。さらに、RTK-GNSSシステム搭載型UAVおよびPPK-GNSSシステム搭載型UAVを用いて防波堤を対象に検証を行い、各々で最大誤差0。021cm、0。089cmの高い測量精度が確認された。高精度なGNSSシステムを登載したこれらUAVの測量結果は、島防波堤の精密な測量が上陸なしに可能となることを示唆している。
 次に、実際の被災現場への適用例として、RTK-GNSSシステム搭載型UAVを用いた写真測量により台風1721号で浸水した港湾空港技術研究所構内の浸水高を推定した。写真に残された痕跡とUAVによる写真測量から、標高2。6mの浸水高と構内最大浸水深0。3mという定量的なデータを、被害発生から時間が経過した状況下で網羅的に取得し、これまで実施が困難であった高潮・高波時の浸水域、さらには公称値と異なる実際の地盤高についても、面的な把握が同時に可能となることを示した。これらの検討結果を踏まえ、台風1821号で浸水の被害があった神戸市において、UAVを用いた被災調査を実施するとともに、時間の限られた調査現場におけるUAVの運用方法について検討を実施した。

キーワード:RTK-GNSS搭載型UAV、測量、台風1721号、台風1821号、消波ブロック、高潮・高波

全文 TECHNICALNOTE1360(PDF/9,149KB)