研究について

研究成果

桟橋上部工のプレキャスト化における杭頭接合方法の提案

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1359 2019年08月
執筆者 川端雄一郎、池野勝哉、加藤絵万、岩波光保
所属 構造研究領域 構造研究グループ
要旨

 近年、建設現場の生産性を向上するため、プレキャスト工法が有効な手段として期待されている。港湾の桟橋上部工は、潮位や波浪等の海象条件の影響を受けながら、足場・型枠支保・鉄筋組立・コンクリート打設といった一連の作業を繰り返し構築される。このため、上部工をプレキャスト化することで、海上作業の大幅な省力化が図れ、品質向上や安全性確保の他、工期短縮など多くのメリットが期待できる。一方、桟橋上部工のプレキャスト化においては、鋼管杭との杭頭接合方法が構造的課題として挙げられる。現行の港湾基準では、桟橋上部工と鋼管杭が剛結条件として設計されるため、プレキャスト化においても架設時の施工性を損なわずに、剛結条件を満足し得る接合方法が望ましい。そこで、著者らはプレキャスト化する上部工に鋼管杭よりも径の大きな鞘管を埋設し、鞘管内に所定の長さの鋼管杭を差し込み、その間隙を無収縮系のモルタル等で充填し一体化する「鞘管方式」を提案し、特に杭頭接合部の固定度に着目した交番載荷実験を実施した。
  実験の結果、提案する鞘管方式は現場打ちの従来方式と比較して、杭頭固定度およびエネルギー吸収性能の観点で優れていることが明らかとなった。鞘管方式の耐荷機構を考察するために実施したFEM解析では、鞘管の上下溶接プレートに溶接された主鉄筋に均等に力が伝達されるため、RC梁杭頭部の損傷が小さく、杭頭の固定度が低下しにくい構造であることが分かった。更に、鞘管方式の実用的な設計法を提案し、交番載荷実験の最大モーメントと比較することで10~20%程度安全側に評価されることを示した。最後に、プレキャスト工法を計画する上での留意点や鞘管方式を採用する上での留意点および施工フローについて述べた。

キーワード:プレキャスト、杭頭接合、鞘管方式、交番載荷実験、FEM解析、耐荷機構

全文 TECHNICALNOTE1359(PDF/4,902KB)