研究について

研究成果

平成28年(2016年)熊本地震による港湾施設等被害報告

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1348 2018年07月
執筆者 野津厚、伊豆太、佐々真志、小濱英司、大矢陽介、寺田竜士、小林孝彰、近藤明彦、長坂陽介、鈴木健之、坪川将丈、内藤了二、竹信正寛、福永勇介、鬼童孝
所属 地震防災研究領域 地震動研究グループ
要旨

 本資料は、平成28年(2016年)熊本地震の発生を受け、国土技術政策総合研究所と港湾空港技術研究所が九州地方整備局の支援の下に派遣した調査団による現地調査の結果を中心として、熊本地震による港湾・空港施設の被害状況をとりまとめたものである。なお、調査団による調査結果以外に、関係機関から寄せられた測量結果などの情報を加えている。また、港湾における強震記録や、強震記録の得られなかった地点での推定地震動についても記載している。
  熊本地震による家屋や社会基盤施設への被害が全体として深刻なものであった中で、調査団が確認した港湾・空港施設の被害は比較的軽微であった。しかし、地震による施設の変状はある程度生じており、その情報は、将来の地震によって類似の施設に起こりうる被害を予測し、対策を考える上で重要な意味を持つと考えられる。
  熊本港の重力式岸壁では、強い地震動が作用したと推定されるにも関わらず、岸壁法線の海側への変位は12cm程度にとどまった。その要因として、軟弱地盤対策としてケーソン直下の沖積層全層にわたり施工されていた改良率80%のSCPの効果が考えられる。熊本港と別府港ではフェリー埠頭の可動橋に不具合が生じたが、その要因としては、海底地盤の傾斜に起因する地盤の変位や護岸の変位が考えられる。これらの事例は、港湾施設の耐震設計において、構造物のみに着目するのではなく、地盤-構造物の全体系をバランスよく見ていく必要があることを示している。

キーワード:2016年熊本地震、港湾、空港、被害、強震動

全文 TECHNICALNOTE1348(PDF/22,525KB)