研究について

研究成果

NOWT-PARIによる航跡波の造波とその検証- 実港湾への適用を目指して -

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1345 2018年06月
執筆者 平山克也、樋口直人、長沼淳也
所属 海洋研究領域 波浪研究グループ
要旨

 港内水域が高度に利用された現在の港湾では、港外から来襲する波浪だけでなく、港内の航行船舶により生じる航跡波などの港内波浪が港内静穏度に与える影響も考慮する必要がある。そこで本研究では、海岸工学分野で提案された従来の航跡波造波モデルを参考とし、航路設定に関する平面2次元場への拡張性や対象船舶の汎用化が期待される新たな航跡波造波モデルを開発して、港内波浪場の算定に広く活用されているNOWT-PARIへ導入した。船型のモデル化では従来の放物線近似に一部改良を施したものに加え、船体動揺計算にも活用されるLewis-Formによる近似も試みた。この結果、既往の実験結果に対して放物線近似と同等以上の再現性が確認され、様々な船型に対する航跡波の造波が可能となった。また、既往の研究ではみられなかった旋回時の航跡波に関する水槽実験を独自に実施し、航跡波の新たな計測方法を提案した。さらに、旋回時の航跡波の再現計算を可能とするための航跡波造波モデルの平面2次元場への拡張を実施し、自由な航路設定が可能となった。ただし、航跡波に対するHeaving,Pitching,Rolling等の船体動揺の影響に関する考察とその対応はまだ不十分であり、旋回時に航路外側で生じる航跡波の最大波高を過大評価することの改善等は今後の課題である。一方、様々な船型に対して本造波モデルを適用できるよう、モデル補正係数m及び中央横断面積係数αの設定方法を示した。特に、m値は本研究で実施した複数の航跡波の再現計算結果をもとに内挿して与えることを提案したが、模型船に対する計算結果とは異なり、実船に対する観測結果(推定式)に対しては過小評価となっている可能性がある。そこで、今後は、実験水槽内で計測される航跡波に対する水の粘性効果を考慮するとともに曳航または自走する船舶諸元が異なる模型船をそれぞれ複数用意し、造波方法の違いに影響されないモデル補正係数の推定を行う必要があると考えられる。

キーワード:Lewis-Form、ブシネスクモデル、航跡波、ブロック係数、港内静穏度

全文 TECHNICALNOTE1345(PDF/5,619KB)