研究について

研究成果

杭式改良体による液状化地盤の側方流動抑制工法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1326 2016年09月
執筆者 森川嘉之、高橋英紀、津田和夏希、高橋直樹、戸村豪治、東畑郁生
所属 地盤研究領域 地盤改良研究チーム
要旨

 過去の大規模地震の際に,液状化した地盤が側方に大きく流動する側方流動現象が発生し被害をもたらしている.液状化に伴う側方流動を防止する根本的な方法は,液状化の発生を抑制することである.しかし,広域に及ぶ場合には大きな費用が必要となるため、側方流動を抑制する合理的な対策が必要であると考える。そこで、筆者らは低改良率の杭式改良を用いて、未改良部の液状化は許容しつつも側方流動を抑制する対策に関する検討を行っている。また、杭式深層混合処理工法に適用可能な改良杭配置である流動閉塞杭を提案し、対策効果の最大化を目指して様々な検討を進めている。側方流動は慣性力と重力の作用によって生じるため、その流動方向は傾斜地などでは斜面下方に向かうことになる。一方、沿岸部における埋立地などでは側方流動の方向は必ずしも護岸法線方向とはならず、様々な方向に流動する場合がある。従来の配置方法である整列配置や千鳥配置では、いくつかの方向に未改良領域が連続しているため液状化した地盤がすり抜け流動できる。これに対して、流動閉塞杭ではどの方向から見ても改良杭が存在して地盤中で流動を阻害するため、様々な方向に流動する側方流動に対して対策効果が高まるものと考えられる。なお、杭式改良による工法の原理は、流動化する液状化地盤を完全にせき止めるのではなく、改良杭によって地盤の流動を阻害し、流動量を減らすことにある。
 本資料では、先ず遠心模型実験により改良杭の配置形状の違いが側方流動抑制効果に与える影響と改良杭に作用する流動力について検討した。次に、液状化地盤を粘性流体でモデル化した有限要素法による流体解析を実施し、改良杭の側方流動抑制効果のメカニズム、ならびにその配置や粘性係数が流動特性に与える影響についても考察した。さらに、本工法の設計法構築を目的に、改良杭に作用する流動力に関しても整理を行い、構造設計法を提案した。最後に、本構造では杭頭部を表層改良と一体化することで杭頭部の回転を拘束し、水平力に対して抵抗する機構を採用している。そこで、施工性確認のための現地試験を実施し、表層改良と改良杭の一体性およびそれらの施工性についても検討した。

キーワード:液状化、側方流動、深層混合処理工法、遠心模型実験、流体解析

全文 TECHNICALNOTE1326(PDF/3,770KB)