研究について

研究成果

マルチコプターを利用した港湾施設・海岸保全施設の点検に関する検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1325 2016年06月
執筆者 野上周嗣、山本幸治、加藤絵万、田中豊
所属 構造研究領域 構造研究チーム
要旨

 港湾施設および海岸保全施設の安定的な機能維持には適切な維持管理が不可欠であり、定期的かつ適切な施設点検の実施がその根幹を担っている。しかし、点検の実施による施設利用への影響、著しい変状や被災施設での点検者の安全確保など多くの課題があるため、効率的そしてより安全な点検方法が必要とされている。
 近年、点検が困難な施設や災害箇所などでGPS やカメラを搭載したマルチコプターが利用されているが、港湾および海岸分野での利用実績は少なく、利用方法に関する検討は十分には行われていない。そこで、本検討では、港湾施設および海岸保全施設の目視点検におけるマルチコプターの利用方法を提案するため、マルチコプターの利用の利点および課題を明らかにすることとした。
 本検討で使用したマルチコプターで港湾施設および海岸保全施設を撮影した結果、施設や部材に発生した段差やずれ、ひび割れの有無など、変状の有無を確認できた。また、著しく劣化した施設の状況を安全に確認できた。しかしながら、桟橋上部工の下面側の確認やコンクリートのひび割れ幅の推定はできなかった。このことから、撮影が可能となる部材の位置および変状の数値的な評価に課題はあるが、詳細点検を実施すべき部材や箇所の選定、著しい変状や被災した施設など点検者の安全を十分に確保できない可能性がある施設の点検などにマルチコプターを利用することが効果的と考えられる。
 港湾施設および海岸保全施設の目視点検にマルチコプターを利用することで、広範囲を短時間で俯瞰的に施設を確認することができ、点検中の施設の利用に与える影響の軽減や点検者の安全確保が可能になることから、効率的かつより安全な点検診断の実施につながるものと考えられる。

キーワード:マルチコプター,ドローン,港湾施設,海岸保全施設,目視点検

全文 TECHNICALNOTE1325(PDF/9,704KB)