研究について

研究成果

超音波非接触式肉厚測定装置の計測精度向上と現地試験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1311 2015年09月
執筆者 白井 一洋、平林 丈嗣、松本 さゆり
所属 新技術研究開発領域 計測・システム研究チーム
要旨

 桟橋や岸壁等の港湾構造物は、耐用年数の間その機能を維持するようにメンテナンスが行われている。鋼管杭や鋼管矢板は、定期的に肉厚測定が行われ、メンテナンスのための検討資料として利用されている。現在行われている肉厚測定は、超音波厚み計を使用して、プローブ(超音波送受波器)を鋼板表面に密着させて測定するため、付着物を除去する前処理が必要となる。前処理に肉厚測定のほとんどの時間が費やされることと、連続的な測定ができないので1点の測定値で周辺の肉厚を代表している等の問題が有る。これらの問題点を解決するため、付着物が付いたままの状態で、非接触で肉厚測定のできる装置の開発を実施してきた。
 港空研では、港湾構造物の維持管理のために行われている鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板等の肉厚を、海生生物等の付着物が付いたままの状態で測定できる超音波非接触肉厚測定装置の実現を目指して、開発研究を実施してきた。測定原理は、鋼板から放射される多重反射波を検出し、肉厚を算出するものである。水中に置いた鋼板に超音波が伝搬すると、鋼板内部で多重反射と呼ばれている現象が発生し、鋼板の表面と背面の間を超音波が往復しながら、少しずつ水中に超音波を放射する。送受波器の方向に鋼板表面から放出される多重反射波を検出し、その時間間隔を測定し、鋼板の肉厚を算出するものである。多重反射波は微弱な信号であり、付着物が有る場合は検出が困難であった。
 本研究では、多重反射波を精度良く検出するため、机上検討、水槽実験、現地調査を行った。その結果、超音波信号は700kHzのバーカ符号とし,送受波器は大口径(直径φ100mm)の焦点集束型音源(焦点距離300mm)を使用した。また、測定を簡単にするため、多重反射波を検出し、肉厚を数値で表示するアプリケーションを作成した。本研究による最大の成果は、測定精度を向上させる測定方法の考案である。本測定方法を考案する以前は、現場計測において付着物が多い場合には、十分な肉厚測定精度が得られていなかったが、本測定方法により飛躍的に性能が向上した。

キーワード:超音波,非接触肉厚測定,パルス圧縮,バーカ符号,維持管理

全文 TECHNICALNOTE1311(PDF/3,795KB)