研究について

研究成果

台風1330号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1301 2015年03月
執筆者 河合弘泰、 有川太郎、 淺井 正、 本多和彦、 藤木 峻、 関 克己
所属 海洋情報研究領域 海洋環境情報研究チーム
要旨

 2013年11月8日午前、台風1330号(アジア名:Haiyan、フィリピン名:Yolanda)は、フィリピンの中東部に位置するレイテ湾を中心気圧895hPaという歴史的にも猛烈な勢力を保って西進し、それに伴い発生した高潮は湾の北端に位置するタクロバンの街を襲った。しかし、この台風1330号による高潮や波浪を捉えた観測データはほとんどない。そのため、国土技術政策総合研究所および港湾空港技術研究所では、台風1330号のコースに沿った幾つかの港湾や空港において、事前に実施した高潮および波浪の推算値の妥当性も確認しながら、施設の被害等に関する2回の現地調査を実施した。さらに、現地調査において得られた情報をもとに港湾運営事務所を活用した住民避難行動を整理し、住民避難において公共施設の避難所への活用に向けた配慮点を考察した。また、台風1330号のコースをはさむ多くのケースのモデル台風を用いてフィリピン中部を対象とした高潮や波浪を推算し、その特徴を考察した。本資料は、これらの現地調査結果および考察の結果を報告するものである。  
 本研究で明らかになったことは以下のとおりである。

(1) 概ねどの港湾でも、事務所等の窓ガラスが割れ、屋根が壊れ、雨漏りがするなど、風や雨による被害が生じていた。
(2) 沿岸部では一時的に避難できる場所の確保が重要であり、港湾運営事務所のような既存のRC構造の高層の建築物を一時的な避難に活用することが期待される。
(3) 台風1330号はフィリピン中部の限られた範囲に高潮をもたらしたに過ぎない。台風1330号の進路が南北にずれると、タクロバンやエスタンシアの周辺以外に3mを超える高潮偏差が生じ得る。
(4) 台風1330号によってタクロバン周辺の潮位は、北寄りの風で下がった後、吸い上げによる峯の伝播と南寄りの風で急上昇した。

全文 TECHNICALNOTE1301(PDF/7.983KB)