研究について

研究成果

海上流出油の移流及び拡散に関する数値計算法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1300 2015年03月
執筆者 松崎義孝
所属 海洋・水工部 海洋環境情報研究チーム
要旨

 本研究では、油回収船の油回収操船支援を目的とした、海上に流出した油の漂流予測を行う油拡散粒子モデル、OIL-PARIを開発した。油拡散粒子モデルは海表面の油に関して、海表面の流れによる油の移流、油膜自身の特性による油拡散、油の乱流拡散を計算できる。本論文において既往の研究から進展させた内容は、油膜自身の特性による油拡散と油の乱流拡散の予測方法についてである。  
 油膜自身の特性による油拡散について、Fay(1969、1971)のモデルの適応を平面2次元油拡散の室内実験結果から議論した。実験において油膜は厚さが10⁻⁴mオーダー以下で拡がっており、その際の拡がり速度はFayの提案する第3段階の表面張力-粘性領域のモデルで説明できることを示した。また、従来行われていなかった、Fayの第3段階の表面張力-粘性領域における拡がり係数を実験結果から導出した。次に、油膜自身の特性による油拡散について、Fayのモデルに基づいた新しい数値計算モデルを開発した。開発したモデルは、表面張力によって拡がる効果を計算するランダムウォークモデルと、重力によって拡がる効果を計算する斥力モデルの2種類である。  
 次に、乱流拡散について、数値計算モデルを用いた計算で必要となる水平乱流拡散係数について、導出した方法は擬似油を用いた実海域実験を行い、流出油のように海水面極近傍に限った水平乱流拡散係数を導出する方法を開発した。また、導出した拡散係数の計算方法について、その適応範囲を議論した。  
 また、実際の油流出事例3件と数値計算結果の比較を行い、数値計算法の有効性を検証した。まず、2007年に韓国泰安沖で発生した油流出事故の再現計算を行い、油の移流重心及び拡散面積について比較を行った。また、1997年に東京湾で発生した油流出事故の再現計算を行い、油の移流位置と観測結果の関係について議論した。さらに、2014年3月に東京湾で発生した油流出事故の予測計算を行い、移流重心が1~2kmの誤差に収まっており、移流速度がほぼ一致していることを確認した。

全文 TECHNICALNOTE1300(PDF/9,344KB)