研究について

研究成果

浅海域における暴波浪の特性解明と港湾・海岸構造物の設計法への応用

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1292 2014年12月
執筆者 加島寛章
所属 海洋研究領域 波浪研究チーム
要旨

 我が国は四方を海に囲まれているがゆえに、沿岸域において台風や低気圧により大規模な波浪災害が絶えず発生している。近年では、設計波高を越える大きな波力を伴う高波だけでなく、設計周期より長い周期をもつうねり性波浪によるものが多く、これらの波浪特性の解明や減災対策の早急な検討が必要である。一方、沿岸域の厳しい自然条件を克服して新しい海域の利用可能性を高めるため、港湾を核とした沖合展開などの大規模な海洋開発では、有義波浪ではなく、現実に現れる波列中の最高波である一発大波の出現特性の解明やその出現頻度の評価が必要となる。特に、沖合人工島における港湾・海岸構造物の建設では、一発大波が構造物に作用する力やその影響を評価しておくことが非常に重要である。しかしながら、現行の港湾・海岸構造物の設計法は、このような波浪ではなく、通常波浪の風浪によって規定している。また、今後の気候変動に伴う長期的な波候の変化も見据えると、設計法における新しい概念の導入や設計外力の算定精度の向上、効率的な対策工法の提案など、さらなる検討を行う必要がある。
 そこで本研究では、近年、甚大な波浪災害や大規模な海洋開発で重要となる波浪(暴風浪)の沖合から浅海域における特性を明らかにするとともに、それらの港湾・海岸構造物の設計法への応用について検討を行った。なお、本論文では、通常波浪の風浪と区別するため、設計周期よりも長い周期を持つうねり性波浪を暴うねり、現実に現れる波列中の最高波である一発大波を暴風浪と定義し、暴うねりに対しては護岸越波を、暴風浪に対しては防波堤波圧を対象に、設計法への応用について検討を行った。これらの成果は、以下のとおりである。
(1) 暴うねり特有の来襲波浪に付随する長周期な水位変動が護岸越波量に大きく寄与することを明らかにし、護岸形状や護岸前面の波浪状況に応じた越波抑制法を講じることで、護岸越波量を格段に減少できることを示した。
(2) 水深と波長の比である相対水深をパラメータとして用いることにより、暴風浪の出現特性を整理できることを示した。また、数値計算で表現できない暴風浪の出現に大きく関わる波の非線形量を解析的に補正することにより、浅海域における暴風浪の出現頻度を高精度に推定できることを示した。さらに、暴風浪の波高に相当する最高波高の出現頻度を活用することにより、風浪の波高分布との乖離を考慮した防波堤の波圧強度を推定できることを示した。

全文 TECHNICALNOTE1292(PDF/10,104KB)