研究について

研究成果

重力式係船岸の新しい増深工法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1277 2013年12月
執筆者 水谷崇亮、森川嘉之、渡部要一、菊池喜昭、合田和哉、加藤繁、小笠原哲也
所属 地盤研究領域 基礎工研究チーム
要旨  輪送船舶の大型化は近年の国際的な傾向であり、我が国においても、国際競争力確保の観点から、港湾施設における船舶大型化への対応が喫緊の課題である。一方、社会基盤全般に共通の課題として、既存ストックの有効活用が挙げられる。港湾分野においても、既存施設の適切な維持・管理や改修による高機能化が重要な課題となっている。  このような状勢から、既存の係船岸の増深がしばしば検討され、事業化されている。しかしながら、増深とは、すでに所定の条件に対して適切に設計・施工されている係船岸についてその設計条件を変更するものであり、容易に実現できるものではない。例えば、重力式係船岸においてケーソンの安定を確保しつつ前面水深を大きくすることは極めて困難である。そのため、重力式係船岸の前面に新たな桟橋等を設けることで増深する方法がとられる。しかし、この方法では岸壁法線が海側へ移動することとなり、もとの岸壁の前面海域に余地が無い場合には対応できない。  重力式係船岸は我が国において大型の係船岸にしばしば用いられる形式であり、これを増深する工法を開発することは、今後の港湾施設整備において非常に有用である。そこで、港湾空港技術研究所においては、日本埋立浚渫協会と共同で、重力式係船岸の増深工法を開発する研究に取り組んできた。本稿はこの共同研究の成果を取りまとめたものである。  検討では、新工法として、捨石マウンドの一部を改良・固化し、掘削することで、重力式係船岸の法線の位置を変更せずに増深する工法を着想し、注入固化したマウンドの力学・変形特性に関する研究、設計法、施工法、施工管理手法の検討を実施した。検討の結果、新工法が設計上成立し、新工法で増深した重力式係船岸が増深前と同程度の耐震性を確保できること、可塑状グラウト材を用いることで捨石マウンドの一部分を改良することができ、新工法による増深の施工が実現可能であることなどを確認した。また、研究成果をもとに、新工法の手引き(案)を作成した。
全文 /PDF/no1277_compressed.pdf