研究について

研究成果

土丹層に支持された鋼管杭の軸方向抵抗力の検討

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 050-04-02 2011年12月
執筆者 水谷崇亮、菊池喜昭、杉本貴之、小濱英司
所属 地盤研究領域 基礎工研究チーム
要旨 横浜港の周辺では、表層の粘性土・砂質土の下部に、土丹と呼ばれる固結シルトの層が観察される。この層は、N値50以上、非排水せん断強度500kN/m2以上という固い地盤であり、層厚も厚いことから、しばしば杭の支持層として期待される。土丹は、非常に過圧密な粘性土であると考えることができ、せん断中の体積の変化傾向や乱された後の再圧密挙動などが正規圧密粘土や一般的な過圧密粘土とは異なる。従って、土丹に鋼管杭を打撃施工した場合、杭先端の閉塞状況や施工終了後のセットアップ(時間経過とともに杭の抵抗力が増加する現象)の発生状況を含め、杭の軸方向抵抗力が、砂地盤や正規圧密粘性土地盤に杭を打撃施工した場合と異なる特性を示す可能性がある。そのため、土丹に支持された杭について、これまでに多くの鉛直載荷試験が実施されてきた。しかしながら、これまでの研究では、載荷試験の結果と既存の支持力推定式との比較や、施工時の杭の打止め管理手法の適用性について検討が中心で、土丹で支持された杭の軸方向抵抗力が発揮されるメカニズムについては十分に議論されていないのが実状である。そこで、本報告では、土丹で支持された杭について、模型実験や要素試験、原位置における載荷試験の結果を整理し、杭の軸方向抵抗力が発揮される要因を調査して、土丹層のおける杭の軸方向抵抗力の考え方についてとりまとめた。その結果、土丹層に支持された杭の先端閉塞状況やセットアップのメカニズムを明らかにし、土丹で支持された杭の軸方向抵抗力が既存の推定値よりも相当大きな値を取り得ることを示した。杭径の影響の検討や、周面摩擦の検討の際の杭周面に対する垂直応力の推定など、施工条件にあわせて考慮すべき課題はあるものの、原位置載荷試験等を行うことなどにより、現行の設計法よりも大きな支持力を期待することが可能であると結論付けられた。
全文 /PDF/799f246ab8fe8a56720ba75220c2fbb0f95928b3.pdf