研究について

研究成果

2010年ムンタワイ地震津波に関する現地被害調査

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1235 2011年06月
執筆者 富田孝史、有川太郎、熊谷兼太郎、辰巳大介、廉慶善
所属 アジア・太平洋沿岸防災研究センター アジア・太平洋沿岸防災研究センター
要旨 2010年10月25日21時42分頃(現地時間)、スマトラ島南部の西方沖(南緯3.5°、東経100.1°)でマグニチュード7.7の地震が発生した。この地震は大きな津波を発生させ、震源近くにあるムンタワイ諸島の南パガイ島、北パガイ島およびシポラ島に大きな被害を及ぼした。本報告は、同年11月6日から8日にかけて、港湾空港技術研究所と国土技術政策総合研究所の合同調査チームがインドネシア政府海洋水産省等と合同で行った津波被害に関する現地調査の結果および津波の数値計算の結果について報告するものである。  現地調査では、南パガイ島および北パガイ島を対象にして、津波の痕跡を測量することにより来襲した津波の高さを明らかにするともに、住民からの聞き取りから津波の来襲状況や避難実態を把握した。  主な調査結果は次のようである。 1) 津波の規模は地震の規模に比べると大きく、北パガイ島や南パガイ島に来襲した津波は約6mであり、特に北パガイ島のマラコパ、セベグングンおよびマゴイルでは7~8mの津波が来襲した。この津波により人的被害や建物の破壊などの被害が発生した。 2) 津波来襲を察知して逃げた人が他の人にも危険性を伝えながら逃げることにより、海岸部の集落全員が助かるという事例が認められた。地震後数分で津波が来襲する近地地震では、瞬時に津波来襲を察知するための技術、その情報伝達について速やかに行うことが重要である。 3) 避難経路の途中にある橋が津波により流されたために、多くの人的被害が発生した地域があった。人的被害の軽減には安全な避難経路および避難場所の設定が重要である。 4) インドネシアの人々は津波に対する意識は高いが、前回の地震の2007年ブンクル地震と比べて今回の地震では揺れが小さかったことから津波来襲はないと考えて避難が遅れた事例が認められた。既往の経験が悪い方向に作用しないようによりきめ細かな防災教育を進める必要がある。
全文 /PDF/no1235.pdf