研究について

研究成果

重防食被覆を適用したハット形鋼矢板の耐久性に関する基礎的研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1230 2011年03月
執筆者 審良善和、山路徹、岩波光保、原田典佳、吉崎信樹、村瀬正次、斎藤勲、上村隆之、北村卓也
所属 地盤・構造部 材料研究チーム
要旨 ハット形鋼矢板は、経済性、施工性、構造信頼性の向上を目的に近年開発された鋼矢板であるが、港湾鋼構造物に適用する際には、適用できる防食対策を確立させる必要がある。そこで、本研究においては、ハット形鋼矢板に重防食被覆工法を適用した場合の鋼材の防食および被覆防食の耐久性について定量評価し、適切な維持管理手法も併せて示すことで、効率的な港湾の施設整備に資することを目的として、実験的検討を試みた。なお、ハット形鋼矢板に適用される重防食被覆工法は、矢板形状からウレタンエラストマー被覆となる。  重防食被覆の劣化は、被覆端部や疵部等の鋼材が露出した箇所から腐食性物質が浸透し鋼材の腐食が生じることで、被覆材の接着力低下によって防食層の剥離が経時的に進行することが主体となる。そこで、被覆端部および疵部の劣化進展および鋼材腐食について検討し、耐久性評価を行った。また、得られた知見からハット形重防食鋼矢板の構造性能評価を行い、最後に、ハット形重防食鋼矢板の維持管理方法および具体的な点検診断方法の提案を行った。主な結果を以下に示す。(1)重防食鋼矢板の劣化進行モデルおよび耐用年数予測式を示した。また、ハット形重防食鋼矢板の耐久性は従来のU形重防食鋼矢板と同等またはそれ以上と推察された。(2)被覆内部への劣化進展速度は、被覆端部、疵部ともに3.2mm/年と推定された。(3) 検討で得られた劣化進展モデルをもとに、港湾における鋼材の腐食速度の標準値を用いて断面性能の低下率を予測することができた。(4) ハット形重防食鋼矢板の一般定期点検時の劣化度判定では、劣化度aと判定される劣化進展距離を55mmとして、劣化度判定基準(案)を提案した。
全文 /PDF/no1230.pdf