研究について

研究成果

水中建設機械の遠隔作業支援システムに関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1222 2010年12月
執筆者 平林丈嗣
所属 施工・制御技術部 計測・制御研究チーム
要旨  港湾施設はその大部分が水面下に構築されるためその整備や点検・診断、維持・補修等、多くは水中での作業となるが、現在は相当程度を潜水士等の人力に依存している。このため水中作業を一層安全で効率的に行うことができる技術の確立が急がれる。本研究では、視覚情報が得られない状態でも遠隔操作が可能な水中独自のインタフェイスとして、作業機械から得られる接触情報を用いこれをバイラテラル操作系によりオペレータにフィードバックする遠隔操作手法を提案し、水中バックホウによる捨石荒均し作業を対象事例として研究を進め、室内模型実験、陸上実験を経て、平成16年度に実施工現場における実海域実験を行い、その施工精度や施工能力について検討を行った。  この実験の結果、無視界の遠隔操作において施工精度は+17cm±8cm、施工能力は25.6m2/hであり、潜水士が搭乗する施工方法と同等の施工精度、施工能力を有していることが明らかとなった。この遠隔操作システムでは、作業中に生じる濁りにより視覚情報を得られないような状況においてもオペレータは作業を継続することができ、これは当初の目的であった視覚情報に頼らない遠隔操作を実現できたといえる。  さらに、点検診断・維持補修を目的とした重作業用ロボットアームとして利用することを提案しており、平成18年度よりマニピュレータ化に関する研究を行っている。マニピュレータとして活用するにはエンドエフェクタ座標を直線的に移動させる場面があると予想され、この問題に対し重力補償を用いることにより解決することとした。これはフロント部の重心を計算し、その重心位置により制御指令値に補償を加えるものである。実験の結果、水平、垂直の軌跡ではほぼすべてにおいて目標とした±50mm以内に入っており、従来の比例制御と比較して目標追従が大幅に改善され、直線的な動作が可能となった。これにより建設機械側の操作追従性が向上されれば、遠隔操作における作業効率の向上が期待できる。
全文 /PDF/no1222.pdf