研究について

研究成果

連続観測によって観測された東京湾口と湾奥の流況・水質の特性について

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-01-02 2010年03月
執筆者 鈴木高二朗
所属 海洋・水工部 海洋環境情報研究チーム
要旨  東京湾は閉鎖的であるものの湾口から外洋の影響を強く受ける海域である。外洋水は一般に酸素を多く含むため、その東京湾への流入は富栄養化した東京湾を浄化するものと考えられるが、一方で外洋水は、高塩分であるため湾奥へ移動すると表層の低塩分水と混合せず、密度成層を強化して湾内の環境を悪くしている可能性もある。このような外洋水の東京湾の湾央・湾奥への影響を調査する上では、湾口と湾央、湾奥での観測が必要になる。東京湾の観測についてみると、近年の観測技術の向上にともない、既に数カ所で水質や流況の長期的な連続観測が実施されている。  そこで本研究では、東京湾口のフェリー観測データのほか、東京湾内で計測されている各種連続観測データの特性を調べた。次に、それらの連続データに加え、小型調査船による東京湾の広域調査のデータを用いて東京湾口と湾央、湾奥の関係を調べた。その結果、以下のことが分かった。 1) 東京湾フェリーで計測された湾口の残差流の断面分布の年平均は、上層流出、中層流入、下層流出の3層構造であり、久里浜から2.5km沖合で水深30m地点での流入が大きく、最大で7~8cm/sだった。 2) 東京湾フェリーの流向流速データから得られた海水交換日数は冬季に多く1月には約40日だった。また、4~5月、9~11月に海水交換日数が少なく、10月は約20日であり、高尾ら(2004)のBoxモデルによる算定結果とほぼ一致した。 3) 河川流量Rに対する海水交流量Qの比Q/Rは成層期の6~9月が20~25であるのに対し、3~5と11~12月のQ/R比は40~45と大きく、1~2月は若干小さく約32~38だった。東京湾奥の水質データと比較したところ、成層期の海水交換効率Q/Rは東京湾奥の密度成層の発達と逆相関の関係にあった。また、Q/R比には、風向きの影響と外洋水の東京湾への進入深度が関連する可能性があることを示した。
全文 /PDF/vol049-no01-02.pdf