研究について

研究成果

水中鋼構造物の非接触式肉厚測定器の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 048-04-05 2009年12月
執筆者 吉住夏輝、松本さゆり、片倉景義
所属 施工・制御技術部 計測・制御研究チーム
要旨 港湾構造物のような水中鋼構造物の検査を目的とした非接触式の肉厚測定機を開発した。従来の接触式の検査手法に比べ、非接触式とすることで効率的な検査が可能である。先ず、非接触測定に必要なキーデバイスとして、大口径を有する広帯域超音波送受波器を製作した。この送受波器は、高出力な超音波を被測定物の表面に収束して、その一部を内部に進入させる。進入した超音波は被測定物の内部で厚さ方向 に伝搬して、鋼鉄と水の境界面で反射を繰り返す多重反射と呼ばれる状態となる。本報告では、この多重反射を検出することによって非接触での肉厚測定を可能にした。提案手法の有効性を確認するために、小型水槽試験を行った。厚さ8.5 mmから28 mmの鋼板の肉厚測定を実施した結果、測定誤差は最大で0.5 mmであった。更に貝の付着を再現した鋼板の肉厚測定においても同様の誤差で測定できることを確認した。以上の結果から測定原理の有効性が確かめられた。測定条件として被測定物と送受波器の位置関係について検討した結果、距離を250 mmから450 mmまで、角度を最大3 °に保持しなければならないことが分かった。次に、実用性について検討するため、潜水士による水槽及び実海域試験を実施した。水槽試験では、実物大鋼管杭式桟橋模型の脚部鋼管の肉厚測定を行った。実海域試験は、北九州田野浦岸壁の鋼矢板の肉厚測定を行った。潜水士による測定を可能とするため、超音波送受波器、増幅器、水密容器、解析装置から成る非接触式肉厚測定機を製作した。試験の結果、肉厚の測定誤差は1 mm以下であり、実用上の性能を十分に有していることが示された。
全文 /PDF/vol048-no04-05.pdf