研究について

研究成果

スパイクノイズ処理を有する数値波動水槽による衝撃砕波圧の計算

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1175 2009年03月
執筆者 有川太郎、山野貴司
所属 海洋・水工部 耐波研究室
要旨  衝撃砕波圧はケーソンの破壊・変形を考えるうえで重要な外力のひとつであるが、消波ブロックの不連続部など面的な断面の違いや多岐にわたる構造形式の違いまで考慮して、衝撃砕波圧の発生や大きさを予測することは、理論的・実務的に困難な問題のひとつである。一方、構造物に作用する波圧や構造物周辺の流れまで計算可能な3次元数値波動水槽(CADMAS-SURF/3D)の開発が進められており、さらに計算機の発達により大規模領域での計算が実務的 にも可能となりつつあり、数値波動水槽による衝撃砕波圧の予測が、実務的に可能な環境ができつつある。しかし、衝撃砕波圧の計算の際、スパイクノイズと呼ばれる衝撃砕波圧の時間的特性とよく似た数値ノイズが発生することから、有川ら(2001)は、2次元数値水路(CADMAS-SURF)において、その対策を提案した。  そこで、本研究では、3次元数値波動水槽の実務適用を目標として、3次元数値波動水槽の基本特性を報告するとともに、2次元数値水路でのスパイクノイズ対策の3次元水槽への適用性及び現地モデルへの適用の可能性について検討する。また、スパイクノイズの根本的な原因を探り、抜本的な対策について検討する。  本研究の主要な結論は下記の通りである。 ・数値波動研究会(2001)により開発された数値波動水路を基に3次元への拡張を図った。 ・数値波動水槽の砕波計算の妥当性を実験結果及び経験式との比較により確認した。 ・衝撃砕波圧の計算を行う際に問題となるスパイクノイズに対して、2次元数値水路の処理方法の3次元数値波動水槽での適用性について検討したところ、実験結果と整合する結果が得られることを確認した。 ・並列計算機を用いた計算速度を検討し、大規模計算に適した計算機の特性を明らかにした。 ・現地条件を用いた大規模計算を実施し、衝撃砕波圧が計算できていることを確認するとともに、ケーソンのずれによる衝撃砕波圧の違いを検討した。 ・スパイクノイズの抜本的な対策手法を検証するため、3次元数値波動水槽を気液二相モデルへと拡張した。その結果、液相だけの数値波動水槽におけるスパイクノイズの原因が、水表面において連続式を満たさないこと、および気体セルの圧力が計算できていないことが要因であることを明らかにした。
全文 /PDF/no1175.pdf