研究について

研究成果

現地調査に適したアマモ生長量推定方法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 047-03-02 2008年09月
執筆者 細川真也、井上徹教、内藤了二、中村由行
所属 海洋・水工部 沿岸環境研究チーム
要旨  海草藻類が有する役割の一つとして、富栄養化の原因となる窒素やリンなどの栄養塩固定や地球温暖化原因となる二酸化炭素固定が挙げられる。海草藻類による物質固定への寄与の程度を明らかにするためには、海草の生長量を把握しなければならない。本研究では、1つのアマモシュートにおいて、新しい葉が生える間隔(葉間期;PI)ごとに個葉が相対的に加齢する性質を利用し、PIごとに各葉齢の葉バイオマスを推定して葉の成長量を見積もる方法を提案した。この方法は各葉齢のバイオマスとPIの情報のみを必要とし、かつ、従来の現存量調査方法を基礎とするのみで高度な技術を必要としない。  メソコスム水槽に生育するアマモの生長量について、直接測定法(plastochrone法)による測定結果と本推定法による推定結果を比較した。この結果、調査間隔が1、2ヶ月ともにplastochrone法による結果と良い一致をした。また、PIの季節変動を考慮に入れた方が一定のPIを仮定した場合よりも推定結果の精度は高いものの、PIを一定値としても十分な精度で結果を得られた。  三河湾の海域に生育するアマモ場において、現存量調査を行った。地上部バイオマスは若いシュートほど小さく、生長量の推定においてはシュート齢を考慮しなければならないことが示された。PIは、コホートと地下茎節間長の加齢速度から見積もる事が可能であることを示した。これらから得られた情報を基にアマモ場の生長量を推定した。また、現存量変化と生長量との差から枯死量を推定した。この結果アマモの成長量および枯死量の季節変動を定量的に示すことができ、三河湾におけるアマモ場の物質循環に対する役割を明らかにすることが可能となることを示した。  アマモ場の生長量の測定は、今までの環境調査としてほとんど行われることがなかった。本研究で示した海草生長量の推定方法は、高度な技術を要せず高い精度での生長量推定を可能とすることから、実務レベルでのアマモ場生長量の測定を可能とした。これにより、将来的には、アマモ場の沿岸域における物質循環に対する役割の解明に寄与することが期待される。
全文 /PDF/vol047-no03-02.pdf