研究について

研究成果

平成18年(2006年)千島列島の地震津波の観測結果

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1162 2007年06月
執筆者 清水勝義、佐々木誠、永井紀彦
所属 海洋・水工部 海象情報研究室
要旨  本資料は、ナウファス(全国港湾海洋波浪情報網)が捉えた平成18年(2006年)千島列島の地震津波の観測沖合津波波形を、沿岸の港内検潮記録とともに、とりまとめたものである。本地震は、気象庁の発表によると、発生は日本時間11月15日20:14、地震の揺れから算定されたマグニチュードは7.9、震源は千島列島の太平洋側沖合の北緯46度42.1分、東経154度2.8分、深さ30kmとのことであった。  以下に本資料で明らかにされた内容を箇条書きで示す。  (1)沖合波浪計26観測点、港内検潮所29観測点における津波波計記録を収集整理し、津波波形の検出状を試みた。観測波形記録から津波の第1波を識別することができたのは、沖合波浪計としては10観測点(紋別南・釧路・十勝・苫小牧・青森・八戸・釜石・石巻・小名浜・鹿島)、港内検潮所としては7観測点(枝幸・霧多布・十勝・久慈・釜石・石巻・鹿島)であった。第1波は明確ではなかったが津波波形の識別はできた観測点は、沖合波浪計としては13観測点(石狩新港・留萌・波浮・下田・御前崎・潮岬・室津・高知・上川口・細島・中城湾・平良・石垣)、港内検潮所としては20観測点(瀬棚・岩内・小樽・石狩新港・留萌・羽幌・沓形・根室・浦河・苫小牧東・苫小牧西・白老・森・青森・下田・小松島・宮崎・志布志・中城湾・平良)であった。常時の長周期水位変動と津波波形を識別できなかった観測点は、沖合波浪計としては3観測点(瀬棚・神威脇・清水)、港内検潮所としては2観測点(江差・奥尻)であった。  (2)津波による海面の上下変動は、非常に長時間継続し、翌日(11月16日)の終日にわたって、津波が継続した。多くの観測点で翌日(11月16日)になってから、最大偏差や最大波高を観測した。  (3)もっとも早く津波が到達したナウファス波浪観測点は、釧路港沖合の海象計であり、日本時間11月15日の21:34であった。  (4)最大偏差が10cmを超えた観測点は、ナウファス沖合波浪計としては、第1波の偏差が10cmを超えた紋別(南)、八戸、釜石の3観測点に加えて、釧路、十勝、石巻、小名浜、鹿島、下田、室津、上川口の8観測点を数え、ナウファス港内検潮所としては、第1波の偏差が10cmを超えた枝幸、霧多布、十勝、久慈、釜石、石巻の6観測点に加え、石狩新港、留萌、羽幌、沓形、根室、浦河、苫小牧東、苫小牧西、白老、森、鹿島、下田、宮崎、志布志、平良の15観測点を数え、北海道沿岸から沖縄沿岸に至る広範な沿岸で顕著な津波偏差が見られた。  (5)沖合波浪計と港内検潮所の両観測点で第1波到達から津波を明確に検知できたのは、十勝、釜石、石巻、鹿島の4港であった。ゼロアップクロス法による個別波形解析を試みところ、津波の周期は、個別波毎に大きく異なり、1時間を越える個別波から数分間の個別波まで、きわめて多様であり、多くの観測点で時間の経過と共に、津波周期が徐々に短くなった。また、スペクトル解析結果から、いずれの港湾でも、スペクトル形状は多峰型であり、周期30分以上の長周期成分は時間の経過とともに減衰傾向が見られたが、港湾周辺海底地形に伴うと考えられる相対的に周期の短い周波数におけるピークは減衰が遅かった。これは、ゼロアップクロス法による解析結果で見られた、時間の経過と共に、津波周期が徐々に短くなったのとよく対応した結果であった。  なお、本資料のとりまとめ中であった日本時間2007年1月13日13:23に、千島列島東方の地震が発生し、津波高さは相対的に低かったものの、全国沿岸で津波波形が観測された。このため、本資料では、追記として、2007年千島列島東方の地震津波波形記録に関しても、紹介することとした。
全文 /PDF/no1162.pdf