研究について

研究成果

空港島護岸の越波量低減法に関する模型実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1158 2007年06月
執筆者 南靖彦、平石哲也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  近年、台風の大型化および海上空港の沖合展開化に際し、海上空港では、高潮・高波による越波の影響で場周道路や護岸のり面の破壊および浸水被害が生じており、航空便の欠航による利用者への影響や電気室などの空港施設の機能障害などの経済的な損失を生じさせている。このように空港全体を海で囲まれた海上空港の越波対策を効果的かつ経済的に実施するには、まず、空港島に入射する波の諸元を把握し、それに対し、局所的に越波流量が大きくなる場所の把握すること、さらに、護岸の天端高さに制限がある空港護岸にどのような越波対策をするかが重要である。本研究では、まず実際に2004年台風16号で越波災害のあった関西国際空港を対象モデルとして、これまで事例が無い、空港の隅角部を含む広い範囲を再現した平面模型実験を行い、護岸の構造を直立護岸、緩傾斜護岸、消波ブロック護岸とした場合について、それぞれタイプ別の越波特性について調べた。さらに、越波対策護岸として越波量の低減を図るとともに、水たたきによる越波水の跳ね上がり低減効果のある新しい護岸構造を考案し、各種タイプの護岸との越波流量の比較を行い、構造的な特徴による越波量低減効果について検討した。また、海上空港は陸地に近い浅海域のみならず、沖合にも位置するので、実際の沖合で起こりえる多方向不規則波と浅海域で生じる一方向不規則波を作用させて越波量の比較を行い、各種護岸における波の多方向性の影響についても調べた。  得られた主要な結論は以下の通りである。(1)越波流量が最も多くなる場所は直立護岸では護岸の隅角部であり、緩傾斜護岸および、消波護岸では護岸の隅角部から離れた場所であった。(2)実験値の平均越波流量と越波推定式から算定した平均越波流量を比較すると、直立護岸では両者の結果は非常によくあっていたが、緩傾斜護岸および、消波護岸では、隅角部に近くなるにつれてその差が大きく、隅角部ではその差が最大であった。(3)直立護岸では入射する波の角度の違いによる越波流量の差は小さかったが、緩傾斜護岸と消波ブロック護岸では波の入射角による越波流量の差が顕著に表れた。(4)越波対策護岸として最も効果があった護岸は護岸背後に砕石(水たたきによる跳ね上がり低減用)が入った排水路を有する“越波吸収護岸”であり、直立護岸と比べて越波流量が約1/100程度に小さくなり、越波低減効果が確認できた。(5)越波吸収護岸では相対天端高(hc/H0’)が1.0未満の低い場合に対しても著しい越波低減効果があることが確認され、護岸天端高の制限がある空港において、背後地に余裕がある場合には望ましい形式と考えられた。(6)波の方向分散性による越波量への影響は、特に越波吸収型などの対策を施した護岸では低潮位の場合に現れ、同一の入射波高に対して、多方向の場合には著しく越波流量が低下する。
全文 /PDF/no1158.pdf