研究について

研究成果

緩衝材としてタイヤチップを用いた構造物の耐震性評価

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 045-01 2006年03月
執筆者 Hemanta Hazarika、小濱英司、鈴木嘉秀、菅野高弘
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨  毎年確実に増加している日本の廃タイヤ(日本の人口にほぼ匹敵する本数)のリサイクル率は90%である。2005年2月の京都議定書の発効によって、廃タイヤのリサイクルはサーマルリサイクルからマテリアルリサイクルへの転換(CO2の排出量はサーマルリサイクルの約1/4に減少可能であるため)に迫られている。本研究は、マテリアルリサイクルの有効な利用方法の一つとして、タイヤチップ(廃タイヤを裁断したリサイクル品)を圧縮材として活用し、地震に対する社会基盤の安全かつ経済的な設計・施工と、廃棄物の再利用の両立を目指した耐震補強工法の開発を目的としている。  軽量で圧縮性および透水性に優れたタイヤチップを構造物の背面に緩衝材として使用することによって、構造物に柔軟性を与え、抗土圧構造物に作用する動的荷重の軽減工法を本研究で開発した。本研究では、圧縮性を有するタイヤチップクッションを用いたサンドイッチ型裏込め構造の地震時の性能に関して大型水中振動台を用いてケーソン式岸壁の振動実験を行った。実験では様々な地震波を用いて相互作用システムの耐震評価の検討を行った。  実験結果から、本研究で開発した耐震対策法を有するケーソン式岸壁に対して地震時の荷重を軽減できることが明らかになった。また、ケーソンの残留変位は耐震対策のない構造物に比べて小さくなる事が実証された。さらに、タイヤチップは粒状体材料であり地震時の液状化防止にも有効であることが明らかになった。本研究成果を用いることによって、社会基盤をより安全かつ経済的に設計・施工するだけではなく、廃タイヤのリサイクルはサーマルからマテリアルへの転換に対しても効果があることから、より良い環境づくりに貢献するという利点もある。従って、本工法は高い安全性と環境負荷縮減効果の両面を有するコストパフォ-マンスが高いことから、港湾・空港構造物の耐震補強工法として有効な工法であると言える。
全文 /PDF/vol045-no01.pdf