研究について

研究成果

2004年台風16号による高松の高潮浸水被害とその数値解析

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1104 2005年09月
執筆者 富田孝史、本多和彦、河合弘泰、熊谷兼太郎
所属 津波防災研究センター 主席津波研究官
要旨 2004年の台風16号は、それ以前に九州や瀬戸内海に来襲した台風に比べて強さや規模が極めて大きな特異な台風ではなかった。しかし、高松や玉野など備讃瀬戸周辺において大きな高潮被害を発生させた。これは、これらの沿岸海域において大潮の満潮に高潮が重なり、海水位が著しく高くなったためである。  高潮浸水に関する現地調査の結果、沿岸部の防護レベルの低いところから海水は流入し、内陸部の低い土地に向けて海水は速やかに移動し、低地部に湛水したために被害が発生した。特に、高松沿岸では、大きな波浪を伴わず純粋な高潮による海水位の上昇であったため、越流水は破壊的な様相を示すことはなかった。一方で、高波の作用した岡山県沿岸や香川県西部地域では、港湾や海岸の施設、住宅等の損傷が発生している。したがって、破壊的な浸水を防ぐ観点からは高波の制御が重要な課題といえる。  今回の高潮およびその浸水状況の数値計算は、平面2次元の非線形長波理論に基づいた高潮計算によく使われる数値モデルを使用して行った。海域における高潮の計算では、天文潮を考慮する場合としない場合について計算を行ったが、両方とも観測で得られた高潮偏差よりも小さな結果となった。精度向上のために瀬戸内海における風場の再現精度の向上などの検討が必要である。天文潮が瀬戸内海の高潮偏差に及ぼす影響は大きくはなかったが、瀬戸内海東部に向かうにつれて天文潮を考慮しない場合よりも考慮した場合の方が高潮偏差が小さくなる傾向が認められた。  高松を対象に最小25m の大きさの計算格子を使用して浸水計算を行った。沿岸における観測潮位に合うように平均天文潮位の補正を行うことにより、浸水計算の結果は実際の被害状況とよく一致した。また、浸水過程をより詳細に検討することが可能であることを示した。こういったシミュレーションは、地域の危険性の予測を可能とするので、地域の防災力を向上させるためのツールとしての活用が期待できる。
全文 /PDF/no1104.pdf