研究について

研究成果

非固定航路で不連続的に観測された流況データからの潮汐成分と残差流成分の分離手法について

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 044-02-03 2005年06月
執筆者 鈴木高二朗、竹田晃、橋本典明
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  平成15年12月より東京湾フェリー株式会社所有“かなや丸”に設置されたADCP によって、東京湾口の流向流速データが高密度かつ連続的に得られるようになった。しかしながら、フェリーが東京湾を出入りする船舶をよけて航行するため観測位置が固定していないこと、また、夜間のデータや荒天時のデータが無いことから、通常の調和解析を用いて潮汐成分と残差流成分を分離するのが困難であった。  このような問題を解決するため、調和定数を3 次元の多項式関数として取り扱う調和解析手法(3次元調和解析)を用いて解析を行った。その結果、観測データから3次元調和解析で推定された潮汐成分を取り除いて残差流成分を求めたところ、黒潮系暖水の流入状況などが抽出できることが分かった。  しかし、この手法では、残差流成分は、推定された潮汐成分を観測データから差し引くことによってしか得ることができず、観測データのある時点でしか残差流成分の推定値を求められない。そのため、今回のフェリー観測のように日中しかデータを取れない場合には、連続的な残差流成分の推定が困難である。そこで、Akaike (1980)のベイズ型情報量基準を用いて連続的な残差流成分を推定した。推定された残差流成分と同時期に計測された塩分・水温データとを比較したところ、残差流成分の変化と黒潮系暖水等の流入などの現象が一致しており、連続的な残差流成分を推定できることがわかった。また、欠測を含む仮想データを作成し、欠測の影響を調べたところ、1日あたり14時間程度の欠測があっても残差流成分を推定できることがわかった。
全文 /PDF/vol044-no02-03.pdf