研究について

研究成果

アルカリ骨材反応が発生したコンクリートに対する表面被覆の適用性に関する実験的検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1050 2003年06月
執筆者 浜田秀則、Tarek U.M.、山路徹、小牟禮建一
所属 地盤・構造部 材料研究室
要旨  アルカリ骨材反応(以後、本文においてはASRと称する)に関する問題は、我が国においても発生後既に30年程度が経過した。港湾構造物においても、約10数年前に実構造物における発生事例を報告した1)。その後、ASRの問題は港湾分野のみならずコンクリート工学分野全体においても鎮静化した感がある。しかし、近年、新たにASRによる構造物の被害事例が報告されるに至り、その問題の重要性が改めて認識されてきた。すなわち、ASRの問題は必ずしも十分に解決されている訳ではないのである。  本研究は、ASRが発生しているコンクリートに対して表面被覆を施した場合の反応抑制効果を検討したものである。本研究は以下の二つの項目で構成されている。一つは、表面被覆による無筋コンクリートの膨張抑制に関する実験であり、もう一つは、持続荷重下におけるRCはりおよびRC柱の内部応力に及ぼす表面被覆の効果に関する実験である。  上記の二つのシリーズの実験結果を総合的に考察し、以下の結論を得ることができた。  1)海中部、干満部あるいは波浪の影響を常時受ける飛沫郡のように、常にコンクリート表面が湿潤状態にあるような環境下においては、表面被覆によりASRの反応および膨張を十分に抑制することは困難である。  2)異なる材料により構成される塗膜はその物性が各々異なるため、その効果を十分に得るためには、施工環境、暴露環境に適した材料の選定を行うことが極めて重要である。  3)コンクリート表面が海水に接する環境であっても、海中部あるいは干満部のように常に湿潤状態にある環境以外の場合は、表面被覆によりASRの反応および膨張を抑制することは可能である。  4)表面被覆の効果を最大限に得るためには、ASRの反応および膨張が開始される前に被覆を施すことが重要である。  5)表面被覆を実施する隙には、コンクリート表面の一部でも開放部分が存在すると被覆の効果は大きく低下する。
全文 /PDF/no1050.pdf