研究について

研究成果

久里浜湾における越波被災の要因と特性-ナウファスを用いた臨海部の越波災害予知法の構築-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-02-08 2003年06月
執筆者 安田誠宏、服部昌樹、平石哲也、平山克也、永井紀彦、小川英明
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  臨海部では、人々が快適に海に親しみ楽しむことができるような、付加価値の高い防波堤、護岸等の親水性施設が数多く建設されている。こうした臨海部における防護施設の設計には、従来より平均越波流量が許容値として用いられている。しかしながら、その推定精度は低く、実際には越波による災害が各地で発生している。さらに、護岸位置や港湾形状によって、越波による特性は大きく異なる。そのため、時間越波流量の予測式を用いて、各護岸毎に高精度な浸水予測をし、港湾施設の設計に反映させることが重要である。  越波現況を把握し、危険度を予知する手法としては、ナウファス(全国港湾海洋波浪情報網)等の沖合波浪観測情報を用い、リアルタイムな越波予測をし、警報を発令する方法が考えられる。そこで本研究では、ナウファス波浪観測情報を入力条件として、エネルギー平衡方程式法とブシネスクモデルを組み合わせて、より高精度な波浪変形計算をすることにより、護岸越波流量の推定を試みた。  2002年の台風来襲時に、久里浜湾内の被災護岸において越波観測を実施し、越波量の時間的な変動を計測することに成功した。この実測結果を用いることにより、今回構築した予知法の検証をしたところ、推定値は観測値とよく一致し、本手法の有用性が確認された。さらに、ブシネスクモデルの計算結果を細かく抽出することにより、港湾内の各護岸位置における越波流量の違いを詳細に求め、被災要因と特性を説明できる結果を得ることができた。  本予知法は、護岸法線の配置や形状の特性に応じた、区間毎の合理的な越波推定が可能である。さらに、沖合にナウファス観測点が設けられている他の港湾についても適用可能であり、入力条件として既往最大値や極値統計解析結果を用いることにより、越波の危険度を事前に予知し、港湾施設の設計に反映させることができる。
全文 /PDF/vol042-no02-08.pdf