研究について

研究成果

水平成層構造の地震波動場を計算するプログラムの開発-周波数に虚部を含む離散化波数法の計算精度-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1037 2002年12月
執筆者 野津厚
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨 離散化波数法は水平成層構造を対象とする強震動評価手法の一つである。離散化波数法では震源から放射される地震波を波数積分の形で表現するが、このとき媒質が非減衰であるならば、特定の波数に対して被積分関数の分母が0となってしまい、積分が精度良く計算できなくなる問題がある。そこで、周波数に虚部を導入して複素数とすることが提案されているが、このことにより計算結果に誤差が生じるか否かについては、これまで十分に検討がなされているとは言えない状況であった。一方、震源に比較的近い場所では、地震波にnear-field項やintermediate-field項と呼ばれる残留変位を伴う項が強く含まれる場合があるが、周波数に虚部を導入した離散化波数法では、残留変位に至る変位波形を求めることができるはずである。しかしながら、その場合の残留変位の計算精度もこれまで十分に検証されてきているとは言えない。そこで、本研究では周波数に虚部を含む離散化波数法のプログラムを新たに開発し、その計算精度を検証した。本研究の主な結果は次の通りである。  1.周波数に虚部を含まない離散化波数法との比較を実施した。この比較は表面波の良く発達するケースについて実施したが、表面波の振幅や位相を含め、二つの手法による変位の算定結果は非常に良く-致した。このことから、離散化波数法において周波数に虚部を導入することが計算誤差の原因となることはないものと判断される。  2.震源に比較的近い場所で、地震波にnear-field項やintermediatc-field項と呼ばれる残留変位を伴う項が強く含まれる場合について、残留変位の理論値との比較を実施した結果、周波数に虚部を含む離散化波数法は残留変位に至る変位波形を精度良く計算できることがわかった。  以上のことから、周波数に虚部を含む離散化波数法は、媒質が水平成層構造であるかぎり、震源に比較的近い場所から遠い場所までの変位波形を精度良く評価できる手法であると言える。  本研究で開発した離散化波数法等のソースプログラムを付録CDに添付している。
全文 /PDF/no1037.pdf