研究について

研究成果

羽田空港の地震動特性に関する研究(第1報)表面波の特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1022 2002年06月
執筆者 野津厚、安中正、佐藤陽子、菅野高弘
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨  東京国際空港(羽田空港)では新A滑走路、スカイアーチ、新B滑走路および鉄道トンネルに地震計を設置して観測を行っており、当研究所は記録の収集・整理と解析を担当している。記録の解析を通じて、当該空港のみならず広く軟弱地盤上における空港施設整備において有用となる情報を引き出し、とりまとめて行きたいと考えている。  ここでは、一連の研究の最初のものとして、新A滑走路に展開された地震計群列(アレー〉の記録を利用し、地震波の一種である表面波の基本的な特性(伝播方向、位相速度、波長)を明らかにする。表面波の特性を知ることは、滑走路、沈埋トンネル、埋設パイプラインなど線状構造物の耐震性を議論する際には極めて重要である。なぜなら、線状構造物の各部分に作用する地震動は位相差をもっており、その位相差は水平成層とみなせる地盤では主に表面波に起因すると考えられるからである。このとき、表面波の振幅が同じであれば、波長が短いほど構造物にとって厳しい条件となる。表面波の特性は場所毎の地下構造を反映して著しく異なることが知られている。従って、原位置での表面波の特性をアレー観測の結果に基づいて明らかにすることが望ましい。ここでは新A滑走路のアレー観測結果にF-K解析を適用して、当該空港における表面波の特性を明らかにする。  解析の結果、羽田空港を伝播する表面波のうち、最も波長の短いラブ波基本モードの位相速度は、周期1秒で約400m/s、周期3秒で約750m/sであることがわかった、また、波長については、周期1秒で約400m、周期3秒で約2250mであることがわかった。これらの値は地盤が線形に近い状態での値であることに留意する必要がある。観測で得られた表面波の分散曲線(位相速度と周期の関係)と既往の文献に基づいて設定した当該空港の深部地下構造モデルによる理論分散曲線とは良い一致を示す。
全文 /PDF/no1022.pdf