研究について

研究成果

砂地盤の吸い出しによる消波ブロック被覆堤のブロックの沈下被災について-現地調査と大規模実験-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 041-01-02 2002年03月
執筆者 鈴木高二朗、高橋重雄、高野忠志、下迫健一郎
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  消波ブロック被覆堤は反射波と波力を低減するためにケーソン前面に消波ブロックを設置する防波堤である。通常、消波ブロックの質量は、設計式、および実験式で適切に決められているが、質量不足によるブロックの散乱の他に、設計波高より小さい波によっても被災する事例が全国各地で見られ、沈下後の復旧に1つの防波堤で数千万~1億円の費用を必要とする場合も少なくない。そこで本研究では、ブロック沈下の原因を調べ、適切な対策工法を得ることを目的とした。  まず、現地の消波ブロックの沈下形態とその原因を調べるため、被災の発生した防波堤の設計断面や設計条件、施工と被災時の状況、さらに被災発生後の経過を調ペた。その結果、設計波高より小さい波で被災した防波堤では、ブロック下部のマウンドが沈下していることが明らかとなった。被災は特に、砂の粒径が小さく、周期が長いうねりが作用した場合に発生しており、砂の洗掘・吸い出しあるいは波浪による地盤の液状化で被災している可能性が高いことが明らかとなった。  このような砂の洗掘・吸い出しや波浪による地盤の液状化は、縮尺効果のため小型移動床実験では再現することができないため、現地の約1/4~1/16スケールの移動床模型実験を行って被災の再現を試みた。その結果、砂が徐々にブロック下部マウンド下から吸い出されることでブロックが沈下していくことが明らかとなった。さらに、マウンドや砂地盤内部の流速と圧力を計測した結果、吸い出し現象は消波ブロック前面で発生する砕波によって、ブロック下部の振動流が沖向き時に継続時間が長くなることで発生していることが判明した。この現象はこれまで考えられていた重複波の法先洗掘や波浪による地盤の液状化による被災のメカニズムとは異なるものである。  吸い出し現象を防ぐ対策工として、捨石マウンドや洗掘防止マットの効果および施工法について検討した結果、洗掘防止マットは法先のみに設置するだけでは効果が無くマウンド下部も帆布等で被覆すべきであること、捨石マウンドは法先まで厚く延ばすと効果的であること、細粒砕石の使用で経済的に砂の吸い出しを抑えることができること等が明らかとなった。
全文 /PDF/vol041-no01-02.pdf