研究について

研究成果

海洋短波レーダによる面的波浪観測法に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 041-01-01 2002年03月
執筆者 児島正一郎、橋本典明、佐藤裕司、吉松みゆき
所属 海洋・水工部 海洋水理研究室
要旨 近年、沿岸域において海上空港(例えば、関西国際空港など)に代表される大規模構造物の建設が増加しつつある。  これに伴い、施工前に行う調査海域は広域化し、従来の波高計では効率的にこれらの海域の波浪観測を行うことが困難になってきている。また、年々、海面利用が複雑な海域(例えば、漁業が頻繁に行われる海域や船舶の航行が頻繁に行われる海域)において、従来型の波高計を設置することが困難になりつつある。このため、沿岸域を広域的かつ非接触に観測することができるリモートセンシング技術を応用した新しい波浪観測への需要が、社会的・工学的に高まってきている。このような要望に応えるために、本研究は短波帯の電波を利用する海洋短波レーダを利用した面的波浪観測法の開発を行った。  本研究では最初に、これまで提案されているレーダの受信信号から波浪の諸量(有義波高・有義周期・方向スペクトル)を推算する解析法の問題点を明らかにした上で、これらの問題点を解決するための新しい信号処理(Waveletを利用した多重解像度処理)法と解析法(一次散乱を考慮したペイズ型方向スペクトル推算法〉を開発した。さらに、海洋短波レーダによる波浪観測の精度を左右するノイズの観測を行い、その時空間変動特性を明らかにした。その上で、ノイズが波浪の方向スペクトルの推定に及ぼす影響を数値シミュレーションによって定量的に明らかにした。最後に、パルス方式の海洋短波レーダと比較して、受信信号のダイナミックレンジを広く取ることができない(SN比が悪い)FMICW方式の海洋短波レーダによる面的波浪観測を行い、波高計との比較を行った。この検証観測により、海洋短波レーダによって観測することができる波浪の方向スペクトルの精度と問題点を明らかにした。
全文 /PDF/vol041-no01-01.pdf