研究について

研究成果

東京湾における密度構造の変化と流れ場-黒潮の流れと東京湾-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 039-01-02 2000年03月
執筆者 日比野忠史、野村宗弘、岡田知也、古川恵太
所属 海洋環境部 環境評価研究室
要旨  内湾における流れ場を再現するためには、境界から流入する水塊の密度(水温・塩分)を把握することが必要である。東京湾外湾湾口(館山)での表層水温は館山での潮位によって表されることを2章で示した。さらに、外海の水位変動によって東京湾内において流れが起こり、海水交換が促進されることを3章、4章で示した。これらの結果は今後、東京湾での流れや生態系の問題を数値計算によって解決するための基礎となるものである。  東京湾には相模湾(本州南岸)固有の冷水塊と黒潮系の暖水塊が流入し、東京湾内の海水交換を促進している。ここでは、東京湾に流入する水塊とその機構(外力)について検討し、気圧場から東京湾に流入する水塊特性を推測する可能性について明らかにした。  さらに、東京湾における流れ場は非成層期と成層期で卓越する外力が異なることを明らかにした。非成層期には朔望周期に伴って内湾下層へ大規模な外海水の流入(海水交換)がある。この現象では大潮期に湾外水が東京湾外湾湾奥(横須賀~富津岬付近)に流入し、流入した外湾水が小潮に向かって東京湾内湾下層に浸入、上層水が外湾に流出している。成層期には非成層期に卓越する朔望周期の流れの影響は小さい。成層期の海水交換は低気圧通過時の気圧変動や洪水によって引き起こされる東京湾と外海との水位差が外力となって行われている。両海域に水位差が生じる主な要因として、1.停滞前線、台風にともなった広域の水位変化(低気圧通過後の気圧上昇、水位低下)、2.河川流出の増大による大規模プリュームの伝搬が考えられる。前者は外海水位の低下、後者は東京湾水位の上昇が起こり、東京湾内の流れが起動される。どちらの場合も上層から流出する流れが生じ、これを補償するために外湾の低水温・高塩分の水塊が湾内下層に流入し、海水交換が生じている。
全文 /PDF/vol039-no01-02.pdf