研究について

研究成果

閉鎖性内湾域の海水浄化に係わる水理・水質環境に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0900 1998年06月
執筆者 村上和男
所属 特別研究官 環境担当
要旨

 閉鎖性内湾域は、海域が静穏なこともあり高度に利用されている。また我が国の大都市は内湾域に隣接していることが多い。そのため、周辺から大量の汚染物質が流域に流入するとともに、湾口部が狭いために海水交換が小さく、湾内に汚染物質が蓄積し、内湾域の水質は富栄養化の状態となっている。
 本論文はこの問題を解決するために、閉鎖性内湾域の海域浄化の方法として、海水交換の促進、貧酸素水塊の解消、および底質浄化による栄養塩の削減等の水質改善方法について述べている。  
海水交換に関しては交換のメカニズムを整理するとともに、一方向流と水平循環流の海水交換に及ぼす効果を示し、有効的な海水交換促進の方法を提案している。また、湾口部に設置された防波堤の海水交換に及ぼす影響は、水平循環流を形成して海水交換を促進する効果を持つが、鉛直循環流による海水交換を阻害する可能性もあることを示した。
 貧酸素水塊の形成に関しては、大船渡湾の場合、夏期の上下層の水質成層による小さな鉛直混合の影響が大きいことが示された。また、熱交換を考慮した鉛直一次元モデルにより水温成層の形成と破壊、貧酸素水塊の形成と回復の過程を再現した。更に海水交換の促進や負担料の削減が貧酸素水塊の回復に有効であることが感度解析より示された。
 底質浄化による底泥から栄養塩の溶出削減に関しては、室内実験により浚渫と覆砂による溶出量の削減率を求めるとともに、三河湾での現場実験により汚染されていない砂での覆砂が底質改善、および水質改善に有効であることを示した。

全文 /PDF/no0900.pdf