研究について

研究成果

兵庫県南部地震におけるケーソン式岸壁の挙動の有効応力解析

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 036-02-03 1997年06月
執筆者 一井康二、井合進、森田年一
所属 構造部 地盤震動研究室
要旨  1995年1月17日の兵庫県南部地震において、神戸港の多数の港湾施設が被災した。本研究は、神戸港の岸壁の約9割を占めるケーソン式岸壁の被災メカニズムについて2次元有効応力解析によって検討を加えたものである。解析対象とした岸壁は六甲アイランド南側の設計水深-14mの大型重力式岸壁であり、水平変位約4~5m、沈下約1.5~2.0m、傾斜角約4度の大きな変形が地震後に生じた岸壁である。また、解析に用いた土質パラメータは凍結サンプリングなどの調査結果に基づき決定し、解析モデルとしてはひずみ空間における多重機構に基づくモデルを用いた。  解析の結果、水平変位約3.5m、沈下約1.5m、傾斜角4度のケーソンの変形が得られ、上述の実被害とオーダー的に整合する結果が得られた。また、被災メカニズムとしては従来設計で考慮している滑動等の変形モードと異なり、ケーソン周辺の置換砂・埋立土の広範囲の変形が生じていることがわかった。  さらに、入力地震動の加速度レベルや置換砂・埋立土の液状化強度、上下動の影響などについてパラメトリックスタディを行い、ケーソン式岸壁の被災変形量に影響を及ぼす因子について検討を行った。検討の結果、置換砂および埋立土における過剰間隙水圧の上昇に伴う土の軟化により、岸壁の変形量が純粋に慣性力のみにより変形した場合に比べて2倍程度まで増加したことがわかった。また、従来の野田・上部による被災事例に基づく被災変形量の予測結果と今回の有効応力解析による被災変形量の数値解析結果はよい整合性を示した。
全文 /PDF/vol036-no02-03.pdf