研究について

研究成果

島による遮蔽を受ける海洋波の方向スペクトルの出現特性-新潟沖の観測結果-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0783 1994年09月
執筆者 永井紀彦、橋本典明、浅井正
所属 海洋水理部 海象調査研究室
要旨  海洋波の方向スペクトルは、有義波諸元や周波数スペクトルと比べて明らかにされていない点が多く、方向集中度パラメターなどのパラメターを用いて便宜的にその特性を表現しているのが現状である。このため、全国港湾海洋は郎情報網(ナウファス:NOWPHAS:Nationwide Ocean Wave information network for Ports an HArbourS)の一環として、現在、第一港湾建設局新潟沖は郎観測地点と第二港湾建設局いわき沖波浪観測地点では、多方向不規則波の観測が定常的に実施されている。本資料では、新潟沖波浪観測地点(水深h=-35m)で測得された方向スペクトルの特性に与える佐渡島の遮蔽効果を、現地観測データを用いて検討している。さらに、遮蔽により方向分布形状が歪んだ場合に方向スペクトルの示す特性を数値的に検討している。  本資料で得られた主要な結論は次に示すとおりである。 (1)新潟沖で取得された海洋波の方向スペクトルは、佐渡島の遮蔽を受けて、エネルギーの方向分布がW~NW方向で小さくなることが確認された。遮蔽を受けた方向スペクトルは、ピークに対して非対称な形状を示したり、2山型の分布形状を示す。移動性の低気圧など、波向が短時間に大きく変化する気象擾乱が発生した場合に、この特性が顕著に現れる。 (2)遮蔽領域の端部の方向から入射する波の出現頻度は大きい。これに対して、遮蔽の影響を受ける範囲からの波の出現頻度は小さくなる。遮蔽域内にあたる波向をもつ波浪が観測される場合、有義波諸元の値が小さくなる傾向が認められた。とくに、有義波周期についてその影響が大きい。 (3)佐渡島の弾崎で遮断領域内にあたる波向の波浪が観測された場合、新潟で観測される波向は遮蔽領域のうち弾崎の波向の近い方の端部の方向を示す。波向別の波浪出現頻度が遮蔽域の両端で大きくなるのはこのためである。 (4)光易型方向関数から遮蔽域内の波エネルギーを取り除いたものを遮蔽を受けた後の方向スペクトル形状と仮定し、数値的検討を行った。この結果、遮蔽の影響を受ける前後での波向や波向別波浪頻度分布の変化を実際の現象と対比して説明することができた。 (5)上記の方向関数に対しては、平滑化を行った方が数値的検討結果と観測結果との対応がよい。これは、新潟沖で観測された方向スペクトルでは、佐渡島を通過後の伝播時の回折の効果が無視できないためである。
全文 /PDF/no0783.pdf