研究について

研究成果

二重円筒ケーソンに作用する波力と滑動安定性に関する実験的研究-境港現地実証試験に関する再現実験-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0742 1992年12月
執筆者 高橋重雄、下迫健一郎、佐々木均
所属 水工部 耐波研究室
要旨 大水深の高波浪海域における新しい波浪制御構造物として開発された二重円筒ケーソンは、優れた消波性能や曲線的な景観の美しさなどにより、大水深域以外での通常の防波堤の代わりとしても活用が進められている。鳥取県の境港では、運輸省第三港湾建設局によって実際に二重円筒ケーソンが建設され、現地実証試験が行われた。実証試験は、波圧等の測定を目的とするだけではなく、1年に1回発生するような波に対して滑動するように設計されたケーソンを設置し、世界で初めて実際にケーソンの滑動状況が観測された。  本研究は、境港における現地実証試験で観測されたケーソンの滑動状況を水理模型実験によって再現し、これまで行ってきた水理実験の妥当性を確認するとともに、現行設計法の妥当性を調べたものである。  本研究における主要な結論は以下の通りである。 (1)二重円筒ケーソンの滑動現象は、現地データ、模型実験結果ともに、実測波力から求められる滑動安全率で適切に評価できる。 (2)現地において計測された波圧は、現行設計法における計算値とほぼ一致する。 (3)模型実験における波圧と現地データはほぼ一致しているが、部材によってはやや模型実験結果のほうが大きい場合がある。 (4)円周方向の波圧分布形は、周期が長く波高が小さい場合は等分布に近く、波高が大きく衝撃的な波力が作用する場合は、正面で大きく側面で小さい偏分布となる。 (5)マウンドとケーソンの摩擦係数は、マウンドの締固めが十分でないとやや小さくなり、現地の滑動函の場合、摩擦係数が0.6よりも小さかった可能性が高い。 (6)滑動函の中詰め水の流出を仮定することにより、現地における滑動現象を模型実験によってほぼ再現することができる。 (7)ケーソンが3函しかなく法線方向の長さが短かったため、回折波によりケーソン背後の水位変動がみられた。特に周期が長い場合に、押し波時に背後の水位が低下し、滑動抵抗力が減少した。
全文 /PDF/no0742.pdf