研究について

研究成果

塩害を受けた鉄筋コンクリート部材の補修効果に関する実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0725 1992年03月
執筆者 濱田秀則、福手勤、阿部正美
所属 構造部 材料研究室
要旨  鉄筋コンクリート部材の塩害とは、鉄筋の腐食に起因するかぶりコンクリートのひびわれ、剥離、剥落のことをいう。本研究は、このような劣化に対する補修の方法ならびにその効果を検討するために取り行った。  本研究の主要な目的は以下に示すとおりである。 1.現在実際に施工が行われている補修工法の補修効果を検討し、さらに合理的な補修方法を考察する。 2.塩害により劣化した桟橋コンクリート上部工に関する「補修設計」の確立に寄与する。  一連の実験より以下のような結論が得られた。 (1)鉄筋塗装、コンクリートの断面修復、コンクリートの表面被膜による補修を実施した場合、補修効果に及ぼす鉄筋処理の影響は極めて小さい。 (2)断面修復材と母材コンクリートの付着性を確保することが重要である。 (3)コンクリート表面被膜が補修効果に及ぼす影響は補修後のコンクリートのひびわれの有無に左右される。 (4)母材コンクリートの塩分の含有および母材コンクリート中の含水量の多少は補修効果に影響を及ぼす。 (5)ひびわれ注入材としてセメント系よりもエポキシ樹脂系の方がよかった。しかしながら、エポキシ樹脂系は作業員の人体に悪影響を及ぼすことが懸念される。 (6)今回の試験の範囲内では、ひびわれ注入の埋設鉄筋への防食効果は明確に認められなかった。 (7)電気化学的測定結果相互の関係、および電気化学的測定結果と発錆面積率の間の関係について相関性を見い出すことができた。 (8)埋設鉄筋とステンレス対極間の電気抵抗の温度依存性について知見を得ることができた。これは、通常用いられている乾湿繰り返し腐食促進試験の促進効果を裏付けるデータと位置づけることができる。 (9)補修設計法の基本的考え方を示すことができたが、それを確立するまでには至らなかった。そのためには、環境条件の定量的評価手法および補修効果の定量的評価手法を確立することが必要である。
全文 /PDF/no0725.pdf