沿岸環境研究グループ

【全球スケール】ブルーカーボン生態系分布変化の将来予測

Coastal and Estuarine Environment Group

ブルーカーボン(BC)生態系(海草藻場、海藻藻場、塩性湿地、マングローブ、サンゴ礁)は気候変動緩和や適応の面においてその効果が期待できます。これまでの研究で、BC生態系の分布は、気候変動によって将来は現状の20~90%が消失すると報告されてきました(IPCC特別報告書等)。しかし、これらの予測は海面上昇に対するBC生態系の遷移をはじめとした重要なプロセスの考慮が不十分なことや、一部のBC生態系や一部の地域のみに着目した研究が多く、分布変化の予測としては多くの疑問が残っていました。

そこで私達の研究グループでは重要なプロセスを考慮したBC生態系分布変化予測モデルを開発し、世界のBC生態系の分布データや地形データをはじめとした多くのデータを用いることで、2100年までのBC生態系の面積変化を予測しました。その結果、海藻藻場や塩性湿地、マングローブは現状維持、海草藻場においては最大で現状よりも11%拡大する予測となり、IPCCの報告をはじめ、大幅な減少を報告していたこれまでの研究とは異なる結果を示しました。(Moki et al., 2023)
不用意な沿岸開発を最小限に抑えることで、BC生態系はこれまで想定していた以上に、気候変動緩和効果を発揮してくれる可能性があります。

2100年までの浅海生態系の面積変化の予測。青線は気候変動対策を講じた最良シナリオ。赤線は何も対策を講じない最悪のシナリオ。それぞれの陰影は、2030年代や2040年代などの各十年期間における予測幅。

 

本研究結果は、AP-PLATのCLIMATE IMPACT VIEWERでも確認できます。
(「2. Category」で"Impact"を選択、「3. Index」で"Shallow coastal ecosystems"を選択してください)