研究について

研究成果

EcoPARIによる2020年8月の三河湾における貧酸素水塊解消に関する流動生態系モデリングと要因解析

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1431 2025年12月
執筆者 松崎 義孝・久保田 雅也・井上 徹教・水口 隼人
所属 海洋環境制御システム研究領域 海洋汚染防除研究グループ
要旨  本論文はMarine Pollution Bulletinで出版された論文 “Ecological hydrodynamic modeling and factor analysis of hypoxia dissipation in the semi-enclosed Mikawa Bay, Japan, in August 2020”の構成を一部変更して日本語訳したものである.半閉鎖性沿岸域である三河湾において,2020年8月20日に顕著な貧酸素水塊の解消が観測された.観測データによれば,この現象は湾口および外洋からの高酸素水塊の流入(貫入)に起因する可能性が示唆されているが,その詳細なメカニズムは明らかになっていない.本研究では,流動生態系の結合モデルを用いて,三河湾における短期的な貧酸素水塊の解消過程を数値的に再現することを目的とした.さらに,感度解析により,密度流・吹送流・潮汐流の影響が貧酸素水塊の解消に及ぼす影響を検討し,主要な寄与要因を明らかにした.モデルによって再現された湾奥域の底層溶存酸素(DO)濃度は,観測値と完全には一致しなかったが,DOの増加タイミングについては高い一致を示し,相関係数0.78,RMSE(平方平均二乗誤差)1.27 mg/L,バイアス−0.57 mg/Lという結果を得た.これにより,本モデルは三河湾における底層の貧酸素状態の改善過程を適切に再現できることが示された.要因解析の結果,湾口付近の高塩分水に起因する密度流が底層DO濃度の上昇に最も大きく寄与していることが判明した.風や潮汐による流動もDO分布に一定の影響を及ぼしているが,底層DO濃度の上昇に対する主因ではないと考えられる.本研究は,貧酸素状態の改善における密度流の重要性を示すとともに,沿岸域の生態系ダイナミクスおよび貧酸素管理に関する知見を提供するものである.得られた成果は,同様の環境下で発生する貧酸素現象の緩和策立案や今後の研究指針にも資するものである.
全文 TECHNICALNOTE1431(PDF/16,797KB)