研究について

研究成果

桟橋支持杭のレベル2地震動に対する性能規定の提案

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 TECHNICALNOTE1429 2025年09月
執筆者 荒木達斗,松村聡,水谷崇亮,塩崎禎郎,野津厚,大矢陽介,嘉數浩靖,小濱英司,川端雄一郎,國里立紀,村田誠
所属 地盤研究領域 基礎工研究グループ
要旨  「平成30年版 港湾の施設の技術上の基準・同解説」(現行基準)における,桟橋支持杭のレベル2地震動における照査では,杭の径厚比や杭に作用する軸力等の影響を考慮した限界曲率を設定し,曲げモーメント-曲率関係がバイリニアモデルに従うと仮定して地震応答解析を行う方法(現行法)が一般的である.また,現行法における耐震強化施設の鋼管杭式横桟橋の照査では,レベル2地震動に対し杭が部分的に限界曲率を超過した場合でも杭の損傷に対する性能を満たすと判断される場合がある.しかし,現行法で一般的に用いられているバイリニアモデルでは,限界曲率uを超過した後の杭の耐力低下を表現できておらず,耐力を過大評価している懸念がある.  そこで,本研究では,限界曲率超過後に設計上考慮している杭の最大曲げ耐力を発揮できる曲率の許容値を設定するため,鋼管杭の三次元FEM解析を実施した.解析では,中詰コンクリートをモデル化したケース(中詰あり)と鋼管杭のみのケース(中詰なし)の三次元FEM解析結果を確認した.中詰ありの鋼管杭において,中詰なしの最大曲げ耐力Mmaxと同等の耐力を発揮できる曲率ucを新しい許容値とした.また,杭径や径厚比,軸力比を変化させた複数ケースを対象とし,杭径ごとにuc/uと軸力比(軸力N/ 降伏軸力Ny)及び径厚比(D/t)との関係性を示した.さらに,導出したucを二次元地震応答解析プログラムFLIPに適用し,三次元FEM解析との整合性を確認した.これらの結果に基づき,ucが杭諸元に与える影響を評価するため,複数の桟橋モデルに対してucを用いた照査を行い,現行法に基づいて設定した断面との比較検討を行った.その結果,ucで設定した断面は,現行法に基づいて設定した断面に対して,鋼材重量の増加量が概ね10%以内になることを確認した. キーワード:桟橋,杭,限界曲率,径厚比,軸力比,地震応答解析
全文 TECHNICALNOTE1429(PDF/5505KB)