研究について

研究成果

モデル誤差を考慮した2024年能登半島地震津波の高解像度波源逆解析

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 REPORT64-3-1 2025年09月
執筆者 髙川 智博・千田 優・藤木 峻・川口 浩二
所属 海洋水理研究領域 津波高潮研究グループ
要旨

 本稿はScientific Reportsで出版された論文“High-resolution Source Inversion of 2024 Noto Peninsula Earthquake Tsunami with Modeling Error Corrections”の日本語訳に補足図を加えたものである.
 2024年1月1日,能登半島を大きな地震が襲い,沿岸で最大5メートルを超える津波を引き起こした.この稀かつ破壊的な津波は,同時に複数の断層が破壊されたことに起因すると推定されている.しかし,海域での直接観測が存在しないため,初期の海面変動の詳細は不明のままである.
 本研究では,最新の高解像度アジョイント合成による波形逆解析技術を用い,観測された水位および流速データに基づいて津波の初期状態を推定した.さらに,振幅および位相に関するモデル誤差を補正する手法を提案し,痕跡高のミスフィットを低減した.幾何平均は1.16から0.99へ,幾何標準偏差は1.34から1.29へと改善された.
 推定された津波波源モデルでは,沖合に3か所,各々約3メートルの隆起ピークが存在していたことが示された.本モデルは海上および陸上観測データをいずれも高精度に再現しており,津波発生機構の理解およびハザード評価の高度化に寄与するものである.より正確な初期条件を提示することは,同様の災害に備えるための防災・減災対策の基盤となる.

キーワード:津波,波形逆解析,モデル誤差,アジョイント合成,津波痕跡高,
2024年能登半島地震

全文 REPORT64-3-1本文(PDF/4175KB)
REPORT64-3-1表紙・奥付(PDF/488KB)