研究について

研究成果

CO2排出量を考慮した係留施設の構造形式選定と低炭素型材料活用によるCO2削減量の試算に関する一考察

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1427 2025年06月
執筆者 山下 真奈、川端 雄一郎、中村 菫
所属 構造研究領域 構造新技術研究グループ
要旨

 社会全体でカーボンニュートラルに向けての取組が活発化する中,港湾分野でもカーボンニュートラルポート(CNP)形成に向けた取組が進められている.建設に伴う CO2 排出量を考慮した港湾構造物の設計を行うことを目指して,構造形式毎に CO2 排出量の傾向分析や CO2 排出量の簡易推定手法の検討が行われている.一方で,同一設計条件下で設計された構造形式の異なる構造物での CO2 排出量を比較し,構造形式の違いが CO2 排出量へ与える影響について検討した研究はほとんど見受けられない.また,現状最終的な意思決定指標となることが多い工事費用と CO2 排出量の関係についても明らかになっていない.今後,CO2 排出量を考慮した設計を行う上で,工事費用と CO2 排出量の関係を明らかにしておくことは重要である.また,港湾工事で低炭素型材料の導入が進んだ場合,低炭素型材料の活用による CO2 排出量の削減効果を考慮して最適な構造形式を選定する必要もある.
 そこで,本資料では,はじめに設計条件の異なる 6 つの係留施設を対象に,施設毎に各構造形式における工事費用や CO2 排出量を算定し,算定結果の比較や傾向分析を行った.次に,それらの結果を基に,各施設で工事費用と CO2 排出量の関係を整理し,両者の関係について考察を行った.対象施設で見られた傾向は,①工事費用と CO2 排出量に負の相関(トレードオフ)が生じる傾向,②工事費用と CO2 排出量に正の相関が見られる傾向,③工事費用と CO2 排出量に明確な相関がない傾向の 3 つであった.施設毎に見られる傾向は様々であるため,工事費用の優劣を基に CO2 排出量の優劣を推定することは難しいことが分かった.また,今後,低炭素型材料が活用されることを想定し,各材料に低炭素型材料を活用した場合の各構造形式での潜在的 CO2 削減量を試算し,得られた結果を考察した.その結果,低炭素型材料の活用により CO2 排出量の観点で最適な構造形式が変わる可能性があることが示唆された.

キーワード:係留施設,構造形式,CO2 排出量,工事費用,低炭素型材料

全文 TECHNICALNOTE1427(PDF/2,078KB)