研究について

研究成果

制振部材を用いた桟橋式係留施設の耐震改良工法に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 63-4-2 2024年12月
執筆者 近藤明彦、小濱英司、国生隼人、天野俊、小山萌弥、藤澤孝夫、吉原到、永尾直也、及川森
所属 地震防災研究領域 耐震構造研究グループ
要旨 高度経済成長期に整備された多くの港湾構造物は,2020年代に供用年数が50年を経過するため,経年劣化による構造耐力の低下が懸念される. また,この間に港湾の施設の技術上の基準は改定されており,設計で考慮する地震作用は一般的に過去のものより大きくなる傾向があることから,既存不適格施設が存在する懸念がある. 本研究では,新設および既設の桟橋式係留施設を対象として,公共施設や民間施設を問わず,耐震性の向上を安価かつ容易に行える耐震改良工法の開発を目的として,基礎杭間に制振部材を設置する耐震改良工法を対象に検討を行った. 本報告では,座屈拘束ブレースに着目し,模型振動台実験,制振部材のモデル化と再現解析,実規模解析による効果的な改良方法の検討および試設計と体系的に検討した結果を耐震性能照査手法(案)と共に報告する. 成果の概要として,模型振動台実験では,制振部材の設置により杭頭の曲げモーメントを設置位置に分担するためバランス良く耐荷し,同一変位レベルで構造全体の減衰定数の増加を示した. 制振部材特性は,消費エネルギーが大きく,設置角度が大きいほど高い改良効果を示した. 二次元動的有効応力解析におけるモデル化方法を検討して定量的な実験結果の再現を行い,実規模での耐震改良効果を検討した. 制振部材の降伏軸力に着目し,降伏軸力が大きい場合に設置位置の分担荷重が基礎杭の耐力を上回り損傷するため,適切な部材選定の重要性を示した. 水深-13mの横桟橋断面(制振部材設置角度60度,レベル2相当の入力地震動3種類)での改良効果は,未改良の直杭式桟橋と比較して,上部工の最大応答加速度は8~32%低減,最大応答変位と残留変位は降伏軸力400kN~600kNで32%~38%低減した. 基礎杭の損傷度合を示す最大曲率比は降伏軸力300kN~600kNで32%~88%低減した. 水深-10m断面では,最大曲率比は同程度低減したが上部工の各応答に改良効果はあまりみられず,水深-7.5m断面では,水深-13m断面に近い改良効果がみられた. 試設計では,従来の鋼管を用いた補剛改良で海側3列の杭間設置が必要な断面に対し,制振部材では海側2列の設置で要求性能を満足する断面を示し,安価に耐震改良できる可能性を示した. キーワード:耐震改良,制振部材,座屈拘束ブレース,直杭式桟橋,三次元水中振動台,FLIP
全文 REPORT63-4-2本文(PDF/17,890KB)
REPORT63-4-2表紙・奥付(PDF/373KB)