研究について

研究成果

漂着海草・海藻に基づく藻場分布域の推定手法の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 63-4-1 2024年12月
執筆者 細川 真也、本間 翔太、大倉 翔太、田村 仁
所属 インフラDX研究領域
要旨 海草や海藻によって形成される藻場の保全・再生・創出は、港湾周辺海域の生物多様性の保全や港湾脱炭素化推進計画に貢献する事が期待される. また、藻場を形成させる生物共生型港湾構造物は、これらへの貢献を可能とする. しかし、そのためには、構造物に形成させる海草・海藻の種をあらかじめ想定しておく必要があるが、港湾に生育できる海草・海藻の種レベルに関する情報は乏しい. 海岸線における踏査は、安価であることから時空間的に広く調査が可能で、かつ、種レベルまでの把握が可能であり、 潜水等のコストがかかる調査手法や種レベルの同定が難しい衛星写真等の解析手法を補完する手法になる可能性がある. 本研究は、この踏査に着目し、海草・海藻の種の生育分布を把握するための新たな手法としての有用性を検証した. 調査は、既往の研究例で空白域が確認されている瀬戸内海の西側を対象として、およそ1か月の間隔で2年間実施した. この結果、漂着海草・海藻調査は、潜水等に基づく既往文献による報告に匹敵する数の種を検出した. また、特徴的な空間分布や季節性を有する種においては、漂着海草・海藻調査は、既往文献で報告されているものとよく一致した空間分布もしくは季節性を示した. 本研究は、さらに、在データのみにより種の出現確率の推定が可能なフリーソフトウェアを用いる事で、漂着データを活用した種の出現確率の推定が可能で あり、漂着データを活用する事で既往文献で報告されていた種の分布を更新できる事も示した. この更新された瀬戸内海における海草・海藻の出現確率は、生物共生型港湾構造物に形成させる海草・海藻の種の選定を支援する知見となる. また、本研究で提案した漂着海草・海藻の調査手法は、瀬戸内海だけでなく他の海域においても、比較的安価に海草・海藻の分布域の把握を可能にする事が期待される. キーワード: 生物共生型港湾構造物、種の分布、調査の空白域、在データ、出現確率
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